ボルソナロ大統領(自由党・PL)の陣営が、選挙高裁の選挙システムを疑うことから方針展開し、宿敵のルーラ氏(労働者党・PT)の攻撃を行うことに照準を定め始めていると、9、10日付現地紙、サイトが報じている。
大統領選支持率調査で劣勢のボルソナロ氏はこれまで、選挙高裁に対して過去の選挙の結果やシステムへの疑問をぶつけ続ける戦略をとっていた。だが、これは「民主主義を揺るがす行為」として強い反発を招き、今日11日には企業家、銀行家、司法関係者など、80万人以上が署名した「法治民主国家擁護のためのブラジル人への書簡」が読み上げられる。こうした状況の中、選挙高裁への攻撃は大統領にマイナスになるとの判断だ。
その代わりに大統領陣営が行おうとしているのは、ルーラ氏のボルソナロ氏批判キャンペーンを止めさせようとするものだ。同陣営は既に、ルーラ氏がボルソナロ氏を称する際に使っている「ファシスト」「ジェノシダ(大量殺人鬼)」などの呼称を「憎悪を巻き起こすもの」として選挙高裁に訴える準備をしている。大統領の弁護団は5日までに七つの訴状を用意していると報じられている。
「ファシスト」という表現は、女性、有色人種、同性愛者に差別的な発言を行う傾向の強いボルソナロ氏によく使われ、「ジェノシダ」は世界保健機構(WHO)が国際的に求めた新型コロナ対策に真っ向から反対し、世界第2位の約68万人の死者を出したボルソナロ氏の責任を問う意味で使われ始めた。
だが、ボルソナロ陣営が今年から雇っている元選挙高裁判事のタルシジオ・ヴィエイラ・デ・カルヴァーリョ弁護士は、これらの言動を「表現の自由の域を超えたもの」と捉え、禁止させようとしている。候補者への強い批判を行うキャンペーンはPTが伝統的に使う手法でもある。
この背景には、ボルソナロ陣営が流した「2002年に殺害された大サンパウロ市圏サントアンドレ市長だったセウソ・ダニエル氏の殺害犯はルーラ氏」「ルーラ氏は(国内最大犯罪組織の)州都第一コマンド(PCC)とつながりがある」などの言説を、最高裁判事で次期選挙高裁長官のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事が「虚偽」と判断し、ネット上のインフルエンサーでもある長男フラヴィオ上議やカルラ・ザンベッリ下議ら18人に対し、この件に関しての投稿を禁止する命令を下したことがある。
また、ボルソナロ陣営はルーラ氏の批判をネット上でも展開している。ボルソナロ大統領のミシェレ夫人や極右福音派議員として有名なマルコ・フェリシアーノ下議らは9日、アフリカ起源の宗教「ウンバンダ」の教会をルーラ氏が昨年訪れた映像を拡散した。この宗教は心霊術を使うため、一部で敬遠されているが、ミシェレ氏らの行為は「信教の自由や教義の自由を侵害し、偏見を助長する」行為として強い批判を浴びている。