《ブラジル》「法治民主国家擁護の書簡」USP法学部で読み上げ=予想の300人どころか約100万人が賛同署名=ボルソナロへの痛烈批判に

USPでの書簡読み上げ式の様子(Paulo Pinto/Fotos Publicas)

 11日、サンパウロ市セントロのサンパウロ総合大学(USP)法学部で「法治民主国家擁護のためのブラジル人への書簡」が読み上げられた。この書簡には100万人近い署名が集められるなど、大反響を呼んだ。全国の大学でも同じタイミングで民主主義を主張する抗議活動が行われ、ボルソナロ大統領が槍玉にあがった。11日付現地サイトが報じている。
 読み上げ会場となったサンパウロ市ラルゴ・デ・サンフランシスコのUSP法学部校舎貴賓室(サロン・ノブレ)には約800人が詰めかけたが、校舎の外には立錐の余地がないほどの人が集まり、路上にも人垣ができた。
 午前10時からの書簡読み上げには、まずカルロス・ジルベルト・カルロッティ・ジュニオルUSP学長が登壇。同学長は「軍事政権時代は自由な思想が弾圧され、当校でも47人もの命が失われた。私たちはこのことを忘れていないし、今後も忘れない。民主主義を拒絶し、攻撃する人物は知性や科学、思考を守らない人者であり、大学(学び舎)を愛さない」として軍事政権を批判した。
 同学長はさらに「私たちは自由で平穏な選挙を望み、虚報や威嚇のない選挙プロセスを望んでいる。ブラジルの大学は独裁主義には断固反対する」と言い切った。これらの表現は、選挙制度を疑う発言を止めようとせず、選挙の集計に軍を関与させるよう選挙高裁に迫るボルソナロ大統領や軍の行為を間接的に批判したものだ。
 続いて、カトリック関連の人権団体「アルンス委員会」の委員でもある弁護士のオスカル・ヴィレーナ・ヴィエイラ氏が、会場に詰めかけた人々は、財界から社会団体、人権団体など、様々なバックグラウンドを持った人たちの代表であることを指摘し、立場の違いを超え、多くの人が民主主義を求めていることを強調した。
 その後もアルミニオ・フラガ元中銀総裁や中央労組(CUT)代表のテルマ・アパレシーダ氏、人権団体「黒人統合(Uneafro)」のコーディネーターのベアトリセ・ロウレンソ・ド・ナシメント氏ら、企業家、銀行家、司法関係者の声明が続々と読み上げられた。
 読み上げの言葉には党派性を出さないよう配慮されていたが、集まった人々が「フォーラ(やめろ)、ボルソナロ」の垂れ幕や公正な選挙を訴えた投票機を型どった人形が持ち込むなど、ボルソナロ大統領を批判する傾向が強かった。
 また、USP校舎の外では民主主義だけでなく、貧困層が急増したことへの抗議のデモが行われた。また、リオやブラジリア、ベロ・オリゾンテ、ポルト・アレグレなどの主要都市でも大学を中心に、民主主義を求める抗議活動が行われた。
 USPの書簡への署名は同日朝の時点で95万6千人に及んだ。今回の署名運動の発起人のセウソ・カンピロンゴ氏は「当初は300人も署名してくれたら御の字くらいに思っていた」と語っており、想像以上に反響が広がったことへの驚きを語っている。

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