日本の和牛シェフ山崎賢一郎さん(宮崎県・43歳)が、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の招へいにより、7月12日から25日まで、サンパウロ市内で日本産和牛のプロモーション活動を行った。
山崎さんは、宮崎県美々津市生まれ。叔父が和牛牧場を営んでいたことから、畜産事業に興味を抱き、同業界の後継者不足や肥料高騰化に問題意識を持った。同時に、世界で活躍できる料理人になることを夢見、京都料理専門学校に入学。同学校を卒業後、単身でフランスのパリに留学し、有名レストラン評価誌「ミシュランガイド」で最高評価「3つ星」を獲得したレストラン「タイユヴァン」に勤めた。
その後、外資系ホテル「ウェスティンホテル大阪」でシェフとして勤務し、京都にて約10年間料理人として活躍した。2018年には、拠点を海外に移し、シンガポールでミシュラン1つ星の寿司レストランを、タイ・バンコクで高級レストラン「和牛割烹 焔(ほむら)」を立ち上げるなどした。
近年は和牛などの日本産食料品の輸出と販売、海外レストラン事業などを行っている「合同会社KYネクスト」でオーナーシェフを務め、ブラジルへの和牛の進出展開活動を行っている。
山崎さんは滞伯中、県連日本祭りにブース出展したJETROの活動協力や、日本文化広報施設「ジャパンハウス」と農林水産省が開催した「日本産食材活用セミナー」の実施協力、JETROがサンパウロ市の高級レストラン「タタ寿司」で開催した飲食店関係者向け和牛試食説明会で講演を行った。
山崎さんは、南米を訪れるのは今回が初めて。ブラジルの伝統肉料理「シュラスコ」を食べ、「ブラジル産の肉は、想像と大きく違い、肉の旨味がしっかりとあって驚きました。正直、食べるまでは、『硬くて旨味の少ないものでは?』と思っていましたので…。ブラジル産肉を日本に輸入して販売しても可能性があると感じました。厨房をのぞかせてもらったら、肉を刺した串を自動でローリングさせてじっくり炭火で焼くグリル設備がダイナミックで驚きました」と述べた。
ブラジルに来て実感したブラジルの食文化に対する印象については「家庭でも肉を日常的に嗜んでいて、思っていた以上に肉を食べる文化が根強い。レストランも多数回りましたが、日常的に利用できる飲食店は、タイやマレーシアなどのアジアと比べてもブラジルの方が断然レベルが高いです。特にイタリアンやフレンチなどの西洋料理は、ブラジルの方が進んでいるので、良い意味で裏切られた気分です」と語った。
和牛講演を行った感想については、「有名レストランやホテルのオーナー、シェフなど現地の専門家の意見を聞くことが出来て本当によかった。ブラジルにはまだ和牛についての知識が十分に伝わっていないことも実感できました。ただ輸出して売るだけでは最終的に価格競争になり生産者が圧迫される恐れがあるので、それを避ける為に現地レストランと組んで、『どう調理すれば和牛がさらに美味しくなり、付加価値が上がるのか』を購入業者に伝える場を設けて、日本の和牛をブラジルにより普及させていきたいです」と意気込みを語った。