サンパウロ州観光ガイド組合が、サンパウロ市内の治安悪化を理由に、同市中央部(セントロ)の歴史的名所の散策を停止するよう勧告したと12日付アジェンシア・ブラジルなどが報じた。
同組合会長のアドリアナ・ペルジザ氏によると、ここ3カ月間の同市中央部での治安の悪化(窃盗や強盗事件の増加)は目に余るものがあり、個人的に注意を呼びかける程度ではカバーできないという。同氏は「多くの人がサンパウロに来る事を止め、中央部に出向く事も差し控えている」という。
治安悪化が特に目立つのは市中央部の旧跡で、サンパウロ市発祥の基となったイエズス会の学校跡のパチオ・ド・コレジオや同市からの距離を測る際の基点ともなるセー広場、サンベント修道院、サンパウロ総合大学法学部があるラルゴ・デ・サンフランシスコなどの周辺部だ。
外国人も混じったグループツアーの場合は特に狙われ易く、落ち着いて名所を訪問する事や中に入って展示物や説明を鑑賞・閲覧する事、写真撮影さえままならないという。
このため、同組合は治安が改善されるまでは徒歩での散策は止めるよう勧告。市観光局はガイド組合とも話し合いを続けており、24時間体制でパトロールを行っていると釈明しているが、ガイド組合を納得させるには至っていないようだ。
市観光局は現在、カタヴェント博物館、パチオ・ド・コレジオ、メルカドン(市営市場)、市立劇場、(コンサートなどにも使われる)サラ・サンパウロなどを盛り込んだ、子供や高齢者、低所得者も参加可能なガイド付き観光プロジェクトを計画中で、9月からの実施を願っている。
ガイド組合がいう治安の悪化は、同市ルス区にあった麻薬常習者の巣窟「クラコランジア」が警察の手入れなどで散り散りになり、イザベル王妃広場に常習者集団が移動した事を受け、警察が5月に同広場でも掃討作戦を行った事などが原因だ。
クラコランジアは麻薬のクラッキ(結晶化させたコカイン)を常習する人達が集まる場所を指している。
掃討作戦以来、行き場を失った麻薬常習者や路上生活者が市中央部の商店を襲い、シャッターを壊して店内を荒らすといった事件も頻発。当該地区住民も安心して出歩けす、同地区を訪れる人が減ったといったとの報道も続いている。
サンパウロ総合大学公共空間・市民権研究所が6月に発表した調査結果によると、クラコランジアにいた人達は現在、市内16カ所により小規模なクラコランジアを形成しているという。
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