「皆さんを痛みから解放したいというのが一番の目的です」―。こう語るのは、「神経制御施術」と呼ばれる手技施術療法を確立し、神経と筋膜を刺激して身体の治療を行う阿部勇次郎さん(53歳、2世、日本帰化人)だ。これまで東京都など日本の8都県を拠点に治療活動を行ってきたが、今年8月末から聖市アクリマソン区にクリニックをオープンし、伯国での活動も実施する。
理学療法士だった阿部さんは、1990年代に出稼ぎとして日本で就労し、95年から2008年まで日本企業で管理監督責任者として勤務した経験を持つ。
その間、2005年から07年まで「日本整体学院」で整体術の免許を取得。07年から09年までは、日本のサッカーJリーグの鹿島アントラーズで理学療法士として働いていたブラジル人からスポーツ選手のリハビリ技術を教わる傍ら、日本企業と組んでポルトガル語を日本語に翻訳する仕事にも携わった。
11年に伯国に戻った際、サンパウロ大学(USP)歯科学科に入学し、16年には同大学院で修士課程を修了。身体の神経と筋膜を刺激することで治療する「神経制御施術」を確立した。
18年に再び訪日し、反復作業が多い工場労働者との付き合いが多かった阿部さんは、自身の患者の95%がブラジル人だという。「(神経制御施術の)技術を教えてほしい」と言われ、18年から21年までは施術の指導を行うなど人材育成に尽力。現在、東京都、埼玉県、栃木県、群馬県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県に15人ほどいる施術後継者はほとんど、以前の阿部さんの患者だったそうだ。
日本と伯国間を行き来する阿部さんは、今回の来伯で8月末に聖市アクリマソン区に「神経制御施術」療法のクリニックをオープンするとともに、物理療法機器の日本からの輸入販売など貿易及びコンサルタント業も並行して行う考えだ。
阿部さんは伯国側法務部担当のセルジオ・ロペス氏とともに編集部を訪れた際、日系社会の重鎮で右肩と左膝に長年の痛みを持つ松尾治さん(84歳、福岡県出身)を、初対面ながら本人の希望で治療した。歯の噛み合わせや左肩、右膝の可動範囲を松尾さんに確認しながら、「神経制御施術」を行い、1時間ほどの施術で松尾さんは左肩の可動範囲が広がり、痛みも和らいだという。
9月上旬頃まで滞伯する予定の阿部さんは、「皆さんを痛みから解放したいというのが一番の目的で、大先輩方に元気になっていただきたい」と話した。
施術に関する問い合わせは阿部さん(電話:11・91575・0022)まで。