堺市母子殺害事件の犯人として日本国内で指名手配されているバルボサ・アンデルソン・ロブソン容疑者(33)がブラジルに逃亡している件に関し、ブラジルでも大手メディアが報道したのに加え、日本メディアも容疑者の兄弟や親族にインタビューするなどの報道が始まっている。
ところが、容疑者はブラジル国内では何の罪も犯していないので、日本から代理処罰の書類提出が行われない限り、当地の警察は何もできない。また、ブラジルは自国民の外国への引き渡しを憲法で禁じているので、犯罪者であっても引き渡すことはない。代理処罰に詳しい二宮正人弁護士に、今後の法的な手続きや見通しなどについて問い合わせた。
「代理処罰の書類が整って、ブラジル内で指名手配されるまでには1~2年かかる」と二宮弁護士は述べる。代理処罰の書類準備にはまず日本の警察が、容疑者が殺人犯である証拠を見つけ、実行犯として確定しなければならない。
次に全ての書類をポルトガル語に翻訳し、担当警察署に届け、日本国外務省からブラジル外務省へ送られる。そこから法務省に届けられ、容疑者が身を隠しているとされるパラナ州高等裁判に送られ、罪に値するか裁判が行われ、ようやく指名手配犯になる。
その手続き中にブラジルから逃亡した場合を考えて、国際刑事警察機構(インターポール)に国際指名手配がされる可能性が高い。
二宮弁護士は、静岡県浜松市のレストラン経営者強盗殺人事件や同県湖西市の女児死亡自動車事故など同類の事件を挙げ、「時間はかかるが解決された」と話し、「いくらマスコミが今報道しても、彼がブラジルで捕まることはない」との冷静な指摘をした。
加えて二宮弁護士は、容疑者が代理処罰裁判された場合、ブラジル刑法の通例からすれば30年から60年の刑が言い渡される可能性があるとし、「書類がブラジルに届くのを待ち、裁判が終わるまでに数年かかったとしても、逮捕されれば間違いなく懲役刑になる」と強調した。
「ただし、ブラジルの場合、どんなに長い懲役を命じられても30年を過ぎたら刑務所から出される」と残念そうに付け加えた。