《チリ》新憲法案に国民の6割が反対=ボリッチ大統領に大きな試練

ボリッチ大統領(Chile Presidency)

 チリで4日、新憲法案に関する国民投票が行われたが、99・99%開票の時点での反対が61・86%で、賛成の38・14%を大きく上回り、ボリッチ大統領の政権下で準備された急進的な内容に難色が示された。4~5日付現地紙、サイトが報じている。
 これはボリッチ政権にとって大きな痛手となった。チリでは2019年に首都サンチアゴで起こった地下鉄料金への抗議から、数カ月に及ぶ歴史的な規模でのデモが起きた。その際、同国の独裁者だったアウグスト・ピノチェト大統領(在位1973〜90年)が1981年に制定した憲法の改正が焦点となった。この憲法が民政復帰以降も租税などに関して格差社会を生む元凶だと見なされていたためだ。
 ボリッチ氏はこのデモの際に学生の左派連合を率い、注目された人物で、それがこの3月に36歳という異例の若さで大統領に就任する理由にもなっていた。それだけに、新憲法制定は就任後の最初の大きな課題だった。
 新憲法は、前任のピニェラ大統領の際に国民の80%が改正を支持したにも関わらず、却下された。メディアの分析では「投票の前に新憲法に関するフェイクニュースが大量に流された」「時代の変化に対する保守派の反対が根強かった」「パンデミックをはさんでしまったことで国民が経済的に苦しくなり、憲法改正への気運が保守的な考えに変わっていった」「経済是正が目標だったのに焦点がぼやけ、性の平等などが盛り込まれた社会的なものとなっていた」などが、その理由にあげられている。
 昨年11〜12月に行われた大統領選でも、ボリッチ氏と「チリのボルソナロ」とも呼ばれた極右政治家のジョゼ・アントニオ・カスト氏の差は僅差で、一次投票ではカスト氏がリードしていたほどだった。
 ボリッチ大統領はこれを受け、「国民の声を真摯に受け止める」とし、「新憲法制定のため、引き続き国民との対話を続けていきたい」と語った。

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