《ブラジル》独立記念日公的行事を選挙運動に私的流用疑惑=ボルソナロが支持者大量動員で=左派政党が選挙高裁に訴訟へ

28万人が「いいね」をしているリオのコパカバーナ海岸での演説の様子(ボルソナロ氏公式Facebookより)

 7日の独立200周年記念式典に合わせ、ボルソナロ大統領の支持者たちが全国的にデモを行った。当初はクーデターなどの動乱なども懸念されたが、結局はボルソナロ氏の大統領選キャンペーンに終わり、公金を使った国の行事を私的な選挙キャンペーンに流用したとして左派政党が選挙高裁に訴える構えを見せている。7、8日付現地紙、サイトが報じている。
 複数のメディアによれば、ブラジリアでは約10万人、サンパウロ市パウリスタ大通りでは約3万2700人、リオのコパカバーナ海岸では11万1千人を動員したと報じられている。
 独立記念日の全国デモは、ボルソナロ大統領が8月の大統領選出馬宣言の際に呼びかけたものだ。ボルソナロ氏がこのとき、「過去の大統領選では不正が行われていた」と証拠もないのに語気を強めて語っていたことや、世論調査でも差をつけられての2位に甘んじていたことから、2021年1月6日に米国ワシントンDCで起きたトランプ前大統領支持派による連邦議事堂襲撃事件のようなことが起きないかが懸念されていた。
 7日は午前中から、全国の主要都市で「軍事政権の復活を」「最高裁を封鎖せよ」などの非民主主義的なメッセージを掲げたデモ参加者の姿が目についた。だが、彼らが暴徒化するような事態は、どこの街でも起きなかった。

オープンカーでのボルソナロ大統領夫婦(Marcello Casal Jr./Agencia Brasil)

 独立記念日恒例のブラジリアでの軍や市民が入り混じったパレードは午前中に行われ、ボルソナロ大統領夫妻もオープンカーに乗って現れた。かねてからの噂通り、この行進には農業界も参加し、トラクターを走らせた。
 ボルソナロ大統領は行進後、場所を変えて支持者らにアピールしたが、横に従えていたのは軍人ではなく、親友の企業家ルシアノ・ハン氏だった。ハン氏はワッツアップ上で「大統領選でルーラ氏が勝利したらボルソナロ氏のクーデターを容認する」との発言を行ったグループのメンバーで、連邦警察の捜査対象に先週なったばかりだ。
 首都でのスピーチでは「今回の選挙は善と悪の闘い」とルーラ氏を口撃した上、「ダッタフォーリャは嘘つきだ」と最大の世論調査機関を批判。これも、これまでの最高裁、選挙高裁を攻撃した選挙システム批判よりかなりトーンを落とし、形を変えた選挙不審発言といえる。
 また、傍にいたミシェレ夫人を抱きしめるなど仲睦まじい姿を披露した大統領は、「男性諸君よ、妻をめとれ」と発言。これは男性優位発言の延長と解釈され、多方面からの批判の対象となっている。
 これに対し、「公金を使って私的な選挙キャンペーンをしたら、明らかに選挙法違反に問われる。市長や知事レベルなら間違いなく罷免もの」と、8日朝のCBNラジオに出演した選挙法専門家は強く断罪した。
 大統領選で争うルーラ氏の労働者党(PT)やウニオン・ブラジルなど、多くの政党も同様の見解を表明しており、ボルソナロ氏が独立記念日を選挙のために利用したとして選挙高裁に訴訟を起こす意向だ。

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