クルド人難民子弟の日本での生活を描いたフィクション映画『マイスモールランド』(川和田恵真監督)が8月、ブラジルのストリーミングサイト「PETRA BELAS ARTES」で公開された。川和田監督はイギリスと日本の血を受け継ぐハーフ。映画ではクルド人難民子弟特有の悩みと共に、在日日系人子弟も直面しがちなアイデンティティクライシス問題についても描いている。
クルド人は主に中東地域に住み、国家を持たない世界最大の民族(人口3000万人以上)として知られる。国によっては、過激な自治権獲得運動を行う民族テロリストとして弾圧対象とされ、弾圧を逃れた人々が難民として各国で保護されている。日本には2千人以上のクルド人がいるとされる。
『マイスモールランド』では、クルド人難民の親の元に生まれ、日本で育った17歳の女子高生サーリャを主人公に、難民子弟の日常生活を描く。サーリャは「自分は日本人」との自己認識を持つが、周囲からはクルド人の置かれている世界的状況や難民子弟としての自身の境遇を理解してもらえず、普段はドイツ人として生活している。
川和田監督はこれまで、早稲田大学在学中に制作した映画『circle』で東京学生映画祭準グランプリを受賞、是枝裕和監督の監督助手を務めた。
川和田監督は2017年に武装組織「イスラム国」と戦うクルド人女性の写真を見てクルド人難民問題に関心を持ち、在日クルド人子弟と関わりを持つようになった。在日クルド人子弟らと関係を深めていくうち、子弟らの抱えるクルド人難民特有の悩み、日本人としてではなく外国人として扱われることで生じるアイデンティティクライシスに共感を覚え、今作の制作に至った。川和田監督は「映画を通じてクルド人難民子弟の生活を追体験してもらえたら」と語った。
映画『マイスモールランド』は、ストリーミングサイト「PETRA BELAS ARTES」(https://www.belasartesalacarte.com.br/minha-pequena-terra)から視聴できる。
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コラム子は、日本生まれ、日本育ちの日系ブラジル人3世だ。ヨーロッパ系の顔立ちから、日本では外国人扱いを受けて育ってきた。「自分は日本人なのに、なんでみんな何人か聞いてくるんだろう?」と幼心に混乱したことも覚えており、『マイスモールランド』で描かれる主人公らの葛藤に、思わず共感してしまった。それに加えてクルド人難民子弟は「もし強制帰国させられたら、全く馴染みのない国で弾圧されて殺されるのでは」と特有の不安を抱きながら生活していることを知り、外国にルーツを持つ日本人仲間として何か助けになることはないだろうかと考えさせられた。