横浜海外移住資料館=「日米、二つの価値観に誇り」=日系米国人俳優タケイ氏講演

資料館見学時に記念撮影(撮影のためマスクを一時的に外す。指のポーズは『スタートレック』中で「長寿と繁栄を」を意味する挨拶。左から椿秀洋日系人協会専務理事、ブラッドさん、ジョージ・タケイさん、中根卓海外移住資料館館長)
資料館見学時に記念撮影(撮影のためマスクを一時的に外す。指のポーズは『スタートレック』中で「長寿と繁栄を」を意味する挨拶。左から椿秀洋日系人協会専務理事、ブラッドさん、ジョージ・タケイさん、中根卓海外移住資料館館長)

 「第2次世界大戦の日系人差別は、米国が掲げる民主主義に反する姿でした。しかし再び、パンデミック下にコロナと人種を結びつけ、アジア系への攻撃などが起こっています」――『スタートレック』のヒカル・スールー(日本版ではミスター加藤)で知られる日系アメリカ人俳優ジョージ・タケイ氏(日本名=武井穂郷、たけい・ほさと、3世、85歳)の来館記念イベント及び『〈敵〉と呼ばれても』サイン会が19日、JICA横浜の海外移住資料館で開催された。当紙取材に対しジョージ・タケイ氏はそう胸を痛めている様子で述べ、歴史を顧みる重要性を訴えた。

 イベントは12時半から来館記念セレモニー及びサイン会が、14時頃からサイン会のみの2部制で開催された。それぞれ先着40人の事前予約で、開始約5分で定員に達したという。当日は大型台風14号が西日本に上陸している影響で時折横殴りの雨が降る中、熱心なファンが会場に足を運んでいた。
 セレモニーでは、タケイさんの講演が行われ、第2次世界大戦中に「敵性外国人」として日系アメリカ人にも及んだ人種差別に関して講演した。自身や家族が受けた実体験も交えながら、収容所への強制収容や16歳以上の収容者に実施された「忠誠登録書」などの理不尽な体験を語った。
 「私は日本の辛抱、我慢、頑張るの価値観と米国の民主主義という2つの価値観を持つ」。タケイさんは、戦時中の差別を受けつつも耐え忍び、民主主義のあるべき姿として日系人への不当収容の補償と謝罪を求める活動も行ってきた体験を語り、「日系米国人として米国を良くしてきた誇りがあります」と力強く締めくくった。
 サイン会が行われた著書『〈敵〉と呼ばれても』は、講演でも語られた実体験を漫画化した長編ノンフィクション。英語の他、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語にも翻訳され、日本語訳版は2020年に作品社から出版されている。
 イベント参加者のひとり和田吉弘さん(わだよしひろ、56歳)は、子供の頃に見た『スタートレック』の再放送をきっかけにファンになった。
 「大変感銘を受けたドラマで、その中で日系人のタケイさんは私にとって大きな存在でした。大変貴重な体験も聞け、勉強になりました」と感想を語った。
 また、テレビ東京の番組『開運!なんでも鑑定団』で、スタートレック関連品の鑑定士を務めるコンサート・プロデューサー岩堀恭一さん(いわぼり・きょういち、71歳)も参加。岩堀さんは家族ぐるみでタケイさんと交流があり、久しぶりの再会を喜んだ。「85歳となると長くお話しするのも体力がいると思いますが素晴らしい講演でした」と頷いた。
 タケイさんはイベント開催前に、パートナーのブラッドさんと共に移住資料館を見学。職員に案内されながらじっくりと観覧した。また、資料館内に25日まで設置されるというタケイさんのミニ展示コーナーでパネルへサインなども行った。20日からはタケイさんによる寄贈品も展示される。

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