28日、ボルソナロ大統領の自由党(PL)が「選挙システムに欠陥が見つかった」とする声明を発表した。この声明の内容は選挙高裁に即座に否定され、 PLが声明の根拠とした調査機関は同党が多額の金を払っていることも発覚している。この行為はボルソナロ氏が落選に備えて行った伏線ではないかと見られている。28、29日付現地紙、サイトが報じている。
PLは28日、「今年の選挙の集計システムには欠陥がある」という声明を発表した。党のロゴが入った書類だが、党首ら責任者によるサインがないため正当性が疑われている。
それによると、同党は「選挙高裁に215の質問を送ったが満足に答えられたのは5%しかなかった」「その内の24件は、選挙高裁に欠陥があり、憲法上の問題となりうるものだ」「内部や外部からのハッキングに対し、投票機が脆弱だ」などの声明を出した。
選挙高裁は即座に反応し、「この声明は嘘だ」と批判した。選挙高裁によると、指摘されていた「欠陥」なるものの多くは、すでに同裁が行ってきたフェイクニュースに関する報告で虚偽とされたものだったという。
PLによる声明は、同党のヴァルデマル・コスタ・ネット党首がアレッシャンドレ・デ・モラエス選挙高裁長官の招待で選挙高裁を訪問し、開票室を見学した際、「(不正集計を行う)秘密の部屋は存在しない」との言葉で選挙システムの公正さや透明性を認めた矢先に発表された。
ボルソナロ氏はこの間もキャンペーンを続け、「自分が6割の票を集め一次当選しなければ不正が行われている」などと、選挙高裁や選挙システムを疑う発言を行っていた。
フォーリャ紙の報道では、PLが選挙高裁に欠陥ありと判断した根拠となるレポートを発表したとされる「インスティチュート・ヴォット・レガル」(IVL)という団体に対し、PLが少なくとも22万5千レアルを支払っていた事実があったことが指摘されている。IVLへの支払は7月29日にデジタル形式の振込で行われており、PLも選挙高裁に対し、「その他の支出」という名義で申請している。
今回の報道は、政界では深刻なものとして受け取られ、「PLはボルソナロ氏が敗れた時に備えて、クーデター(ゴウピ)の準備をしているのではないか」「もう既に選挙に勝てないことがわかっていての対策ではないか」との声があがっている。
とりわけ、今週発表された世論調査の結果はボルソナロ氏にとって苦しいものだ。22日発表のダッタフォーリャの調査でルーラ氏が一次投票で勝つ見込みが再浮上したのに続き、今週はIpec、クアエストといった調査団体でも同様の結果が出ている。社会的に影響力のある有名人からも、ここにきてルーラ氏に投票するとの宣言が相次いでいる。
一部報道によると、ボルナロ政権の閣僚の中にもルーラ氏が勝利した時に備えた行動をとりはじめた人がいるという。一例は進歩党(PP)党首でもあるシロ・ノゲイラ官房長官で、大統領選よりも自身の地元のピアウイ州の選挙に集中し、ボルソナロ陣営を困惑させているなど、セントロンが手のひらを返し始めているようだ。
★2022年9月6日《ブラジル》独立記念日デモ=ボルソナロ派でも意見二分=民主的で温和な主張優勢に=クーデター扇動止め、暴力に難色
★2022年8月27日《ブラジル》サンダース米国上議「クーデターならブラジルと手を切れ」 大統領選に対策法案
★2022年8月24日《ブラジル》連邦警察がボルソナロ派企業家に捜査「ルーラ勝利ならクーデター」問題で