《ブラジル》最後の大統領討論会=挑発繰り返し政策論争ほぼ皆無=かき回し役の大統領派右派牧師=決定打ないまま投票日に

ルーラ氏とケルモン牧師(Twitter)

 9月29日、大統領選の一次投票前最後となるグローボ局での公開討論会が行われた。注目のルーラ氏(労働者党・PT)とボルソナロ氏(自由党・PL)はお互いの攻撃に終始して政策論争はほぼ皆無だった。右派牧師候補が大統領の身代わりとなって左派候補者を挑発する発言が繰り返され、司会のウイリアム・ボーネルが何度も強くいさめる場面が見られた。事態をひっくり返すような出来事が起きないまま、2日の投票日を迎えることとなった。9月30日付現地紙、サイトが報じている。
 この日の討論会には24日のSBT局の討論会を欠席したルーラ氏も参加し、ボルソナロ氏、シロ・ゴメス氏(民主労働党・PDT)、シモーネ・テベテ氏(民主運動・MDB)、ソライア・スロニッケ氏(ウニオン)、フェリペ・ダヴィラ氏(ノーヴォ)、ケルモン牧師(ブラジル労働党・PTB)の7人で行われた。
 だが、注目されたボルソナロ氏とルーラ氏が同じ討論テーブルで対面する事こそなかったが、互いを批判する発言への弁明時間を最大限に利用して激しく攻撃しあった。
 ボルソナロ氏は、「セウソ・ダニエル氏の殺害事件についてどう思うか」と2002年に謎の死を遂げたPTの要人でもあったサントアンドレ市長に関して、テベテ氏に対して質問したが、「本人が目の前にいるのに、私に聞くのは卑怯では。それはルーラ氏に直接聞いたらいいわ」と厳しく言い返された。
 ボルソナロ氏はソライア氏から「選挙の結果は尊重するか」とも詰め寄られたが、この日のボルソナロ氏はこれまでのように感情的になって取り乱すようなことはなく、その点では評価されていた。
 ルーラ氏はこの日、ダヴィラ氏にPT政権時代のメンサロン事件やラヴァ・ジャット作戦などの汚職を指摘され、「1兆2千億レアルを国から盗んだ」と責め立てられた。これに対し、ルーラ氏は「その発言や数字の根拠はどこにあるのか」と返した。
 ダヴィラ氏はルーラ政権に所属していたシロ氏に対してもメンサロン事件の批判を展開するなど、終始反PT政権の論を張り、注目されていた。
 ルーラ氏は終始落ち着いた議論を続けていたが、ケルモン牧師の挑発に乗ってしまい、打って変わって激しく批判的な物言いとなった。同牧師はSBTでの討論会から突然浮上してきた候補だが、ルーラ氏は「一体、どこから出てきたんだ?この討論に出る資格がそもそもあるのか?」と詰め寄り、司会のウイリアム・ボーネルから静止される一幕も見せた。
 ケルモン氏は熱心な親ボルソナロ派のロベルト・ジェフェルソン氏が服役中のために失格となったための代理候補。ジェフェルソン氏自身がボルソナロ氏の応援のための出馬だと目されていた。
 ルーラ氏は、「私に関する嘘を広めるためだけに出てきたのだろう。26件もの裁判を抱えていたのは検察に作られた悪党たちによる過去の話だ」と、ラヴァ・ジャット作戦のことに言及しながら同牧師を批判した。
 エスタード紙は「ケルモン牧師にさえ構わなければ討論はルーラ氏の勝ちだったのだが」とマイナス要因にあげたが、討論会への評価はメディアによってまちまち。大きな変化がないまま、2日の投票日を迎える。

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