大統領選の決選投票を控えたボルソナロ大統領が7日から9日にかけて過激言動で話題を呼んだ。7日の記者会見では身を震わすほどの感情的で激しい演説を行い、その後も、民主主義の根幹を揺るがしかねない最高裁判事増員をほのめかすなどして、物議を醸した。7〜10日付現地紙、サイトが報じている。
ボルソナロ氏は7日、大統領官邸前で記者会見を行い、人気ニュースキャスターのジョゼ・ルイス・ダテナ氏が大統領選で自身を支持すると発表したが、演台に立つや否や、かなりの剣幕で怒鳴り散らした。
大統領は支持率でリードしているルーラ元大統領に対し、「当選時の閣僚予定者をまだ発表していない」と批判。さらに、「14年間も政権にありながら北東部の人たちに満足な福祉支給も行えていない」とし、自身が数日前に「北東部の人は文盲が多いからルーラ氏が人気だ」と言って批判された不満などをぶちまけた。
さらに大統領は、自身の口座の不審な金の動きに関し、側近のマウロ・セーザル・バルボーザ・シジ氏が捜査を受けたことや、各国大使らを集めて選挙活動を行ったとして罰金を科せられたことに関し、最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事を罵った。
ここでのボルソナロ氏の言動は、メディアなどから、「デスコントロラード(抑制できていない)」と批判された。
さらに9日には、取材者から、ボルソナロ氏再選のあかつきには最高裁判事を11人から15人(16人との説も)に増員する案が出ていることに関して訊かれ、「その案は受け取っている」と認めた上で、「最高裁が自分との間の白熱ぶりを抑えてくれたら、却下しても良いのだがな」と、脅すように発言して物議を醸した。
これに対し、2018年の保守派大統領候補だったジョアン・アモエド氏(ノーヴォ)をはじめ、政治ジャーナリストらがこぞって「独裁主義への道を開く」「ベネズエラの保守派版だ」と、批判する声が相次いだ。
ベネズエラでは2003年に当時の大統領だった故ウゴ・チャベス氏が最高裁増員を敢行し、以後、同国での独裁が進んだ。主義は異なるものの、ボルソナロ氏はかつて、チャベス氏を敬愛する発言を行っている。
現状、最高裁でボルソナロ氏が選んだ判事は2人のみだが、再選し、この案が承認されるとこれに4人が加わる上、次の任期で2人が退任となるため、15人中8人が自身の選ぶ判事となる。そうなれば、三権分立の崩壊と恐れられている。
この週末、ボルソナロ氏には「再選時にはフェルナンド・コーロル氏を閣僚に迎える」との説が飛び交い、物議を醸していたが、これはボルソナロ氏本人が9日に否定した。
1992年に大統領を罷免されたコーロル氏はラヴァ・ジャット作戦でも告発を受けるなど、汚職のイメージが強く、大統領時代に行ったポウパンサ凍結では生活苦で自殺者が相次ぐなどの社会問題も引き起こした。
この週末は、ルーラ氏側に対しても、「当選したら教会を壊していく意向だ」との噂が拡散されるなど、両陣営がフェイクニュースへの対応に追われた。
□ミニ関連コラム□
7日の大統領官邸前でのボルソナロ大統領の記者会見は、そもそもは人気ニュースキャスター、ダテナ氏による支持発表と思われていた。だが、ダテナ氏はサングラスをかけ、ただ護衛のように大統領の横に立っていただけで何もしなかったことから、「これは何のための会見?」と不審がる声が相次いだ。すると、ダテナ氏は9日にルーラ氏と会食。さらにその直後にルーラ氏が、「ブラジルの将来のために良い話し合いができた」と一緒に写った写真をSNSで拡散するというサプライズまで起きた。「二人とは支持を目的に会ったのではない」と語るダテナ氏だが、人さわがせとなった。
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