ボルソナロ大統領は14日、ベネズエラ難民の10代の少女たちに関して訊かれ、「pintou um clima」(良い雰囲気になった)という性的にも解釈できる表現を使ったため、ルーラ陣営が批判的に徹底拡散して15~16日はSNS上で大騒動となった。しかし、選挙高裁がこれをやり過ぎと判断したことで、16日晩のテレビ討論会ではルーラ氏からの攻撃材料とはされず、大統領には一安心となった。15、16、17日付現地紙、サイトが報じている。
騒ぎの発端となったのは14日夜、ボルソナロ氏がユーチューブの番組「パパラッツォ・ルブロ・ネグロ」で行った発言だ。
この番組でブラジル国内のベネズエラ移民に関して訊ねられたボルソナロ氏は、2021年にブラジリアのサンセバスチャン地区にある難民施設を訪れたときのことを語った。そこで大統領は、「そこには14、15歳の少女がいたのだが」と言った後に「pintou un clima」の言葉を使った。さらに続けて、「彼女たちのいた家に入った。15~20人の少女たちが土曜日の朝、身ぎれいにしているのは生計をたてるためさ」とも語った。
これがネット上で拡散された途端、大問題となった。「pintou um clima」という表現の本来の意味は「良い雰囲気になる」だが、それを女性に対して使用する場合は「性行為をしたい雰囲気になる」との意味で使われることが一般的なためだ。
しかも、それが未成年の女の子に対して使われたことも問題視され、PT陣営がSNS上で「小児性愛者」と批判的に大拡散した。これは普段、「宗教上のモラル」を強調するボルソナロ氏のイメージを損なうもので、側近やミシェレ夫人らが火消しの対応に追われた。
大統領は「性的なイメージで使ったのではない」「部分的に抜き取られたのだ」と主張し、側近たちもそれに続いた。また、ミシェレ夫人とダマレス・アウヴェス前人権相が発言の発端となったベネズエラ難民施設を訪れて、釈明しようとしたが、少女たちとその家族がメディアにさらされるのを恐れていると聞かされて諦めた。
側近たちの対策も実り、選挙高裁が16日にユーチューブから問題の動画を削除。ルーラ氏側にはこの発言を選挙放送でボルソナロ氏の攻撃材料に使わないようにも命じた。
ミシェレ夫人によると、大統領は日頃から「pintou um clima」という表現を好んで使っているという。ボルソナロ氏は公の場で猥語を使う傾向があり、9月7日の独立記念日の際にも、男性の精力の強さを表す「imbrochavel」という言葉を使って問題となっていた。
この後、16日夜、ボルソナロ氏はバンデイランテス局で行われたルーラ氏との討論会に出席。騒動直後のテレビ出演だけにその影響も心配された。
ただ、討論の前半こそルーラ氏に教育や治安、コロナ対策の問題などを問われ、押され気味だった大統領は、後半ではペトロブラスでの贈収賄工作の問題でルーラ氏に詰め寄って印象をあげた。その討論の際に、2020年に仲違いして袂を分かった元法相でかつてのラヴァ・ジャット作戦の判事、セルジオ・モロ氏がボルソナロ氏の招待者の中にいたことも話題を呼んでいた。