ボルソナロ大統領は18日の選挙放送で、17日にサンパウロ市南部パライゾーポリスで起こった銃撃戦が、大統領派サンパウロ州知事候補であるタルシジオ・デ・フレイタス氏を狙ったものであるかのように語った。しかし、この件は放送前に軍警やタルシジオ氏自身がその可能性を否定している。17、18日付現地サイトが報じている。
銃撃戦発生時、タルシジオ氏は現場から数十メートル離れた大学施設の落成式に招待され、選挙キャンペーンを行っていた。銃撃戦では、約25発の銃弾が撃たれ、強盗の前科のある27歳男性が死亡した。この一件で現場は封鎖され、落成式は中止。事件の捜査が行われた。
軍警が調べた結果、バイクに乗って周辺を行き来しながら録画していた二人組が私服警官から職務質問を受けた事で銃撃戦が発生。バイクを運転していた男性が被弾し、病院に運ばれたが死亡した。
事件と関連があるとみられるファヴェーラ(スラム街)のリーダーは、選挙キャンペーンが行われていたことは知らなかったとしており、市警もタルシジオ氏との関連性はないと判断した。
これを受け、タルシジオ氏も「これは地域内の問題だ」との見解を示し、無関係を主張した。パライゾーポリスはサンパウロ市内でも有名な大規模なファヴェーラ地区だ。
同件に関しタルシジオ氏から連絡を受けたボルソナロ氏は、大統領官邸で即座に記者会見を開いた。その時点では「まだ捜査中で結論は出せないが」と前置きした上で、タルシジオ氏の警備への不安を語るにとどまっていたが、同日夜の選挙放送では、パライゾーポリスでの銃撃戦の映像が「タルシジオ氏と彼の選挙チームが襲われた」とのナレーション付きで紹介した。
この選挙放送では、2018年に起きたミナス・ジェライス州でのボルソナロ氏刺傷事件や、セアラー州フォルタレーザの福音派教会が先週、ミシェレ大統領夫人到着直前に銃撃された事件に触れ、自分たちが政敵に狙われているような印象を与えた。
ボルソナロ氏は、サンパウロ州最大の犯罪組織、州都第一コマンド(PCC)がルーラ政権の頃に友好的な関係を築き、犯罪が見過ごされていたとも主張した。
これらの背景には、ボルソナロ氏が16日に行われた大統領選の討論会でルーラ氏からボルソナロ政権における治安対策の甘さを攻撃されたこと、ルーラ氏が自身のキャンペーンで「リオのファヴェーラに対して勇気を持って取締に挑んだ大統領は私だけ。ボルソナロ氏はミリシアの友人だ」と主張していたことなどがある。
18日には、連邦警察がボルソナロ氏の刺傷事件の犯人、アデーリオ・ビスポ容疑者に対して新たな尋問を希望していることも報じられた。同容疑者はこれまでの捜査で、犯行を命じた人物も、金の支払いを行った人物も浮上せず、単独犯で精神に異常があるとも判断されていた。そのような経緯から、決選投票の直前になぜ尋問を求めるのかとの疑問の声が上がっている。同容疑者が収監されている南マット・グロッソ州地裁は既に、連警の求める同容疑者の精神鑑定を却下している。