統一選決選投票まで残り10日となった。今年の選挙戦は例年以上に過熱しており、その結果、国民は他者を認める事を忘れ、社会から多様性故の豊かさが失われつつあるとの印象を強くしている。
16日に行われた公開討論会では、内容の9割が相手の批判で、今後の構想などについては論じられなかった。虚報合戦も相変わらず続いており、辟易とさせられる。
過熱した選挙戦は宗教の政治道具化も引き起こしている。福音派の牧師達が若者に保守的な考えを強要しようとしたというし、カトリック教会ではサンパウロ州司教区のオジロ・シェレル大司教が赤い法衣を着ただけで、「共産主義を支持しているのか」と批判された。国の守護神「ノッサ・セニョーラ・アパレシーダ」の記念日に行われた聖母大聖堂ミサや、パラー州ベレンの伝統的宗教行事「シリオ・デ・ナザレ」では、聖母達には手も合わせず、選挙活動のためだけにミサに参加している人も多かった。
自分なりの信仰や信条、価値観を持つ事は他者の持つものを認める事につながり、多様性を認める事はその人や国、文化などを豊かにする。
ブラジルのような多国籍、多民族の国は、民族や肌の色、LGBTなどの差を受け入れ、多様性による豊かさを味わい、その価値を知っているはずだ。
もちろん、自分の中に核となるものを持っていても、他者の意見や忠告に耳を傾ける柔軟性や、自分の持つ核が確たる裏付けを持ち、他者からの検証に耐え得るものかを確かめ続ける謙虚さも必要だ。
新型コロナで多くの死者が出、ワクチン接種を勧められても、軽い風邪に過ぎない、接種を受けるとワニになると言って接種を拒み続けた人が、新型コロナで亡くなる前に「接種を受けろ」と言い残したとの話には、上に立つ人の言葉の重さや盲信の怖さを思った。
候補者や支持者が違いや多様性を認め、対話を重ねる事によって一つとなり、民主主義を堅持する事を見届けたい。(み)