ルーラ氏が大統領選に勝った。ボルソナロ氏との獲得票数差は有効投票者数の約1・8%、人数にして210万人ほどと、僅差であった。
投票前から接戦が予想され、一部のボルソナロ支持者が、ボルソナロ氏が選挙で有利になるよう職場で選挙ハラスメントを行ったり、道路警察がルーラ氏への投票を妨害したとの疑惑報道が選挙当日まで聞こえて来た。だが、それでもルーラ氏が敗れることはなかった。
ルーラ氏の勝因に関しては、様々な理由が挙げられると思う。だが、結局のところ、ボルソナロ氏より選挙戦術に長けていたということだとコラム子は思う。今回のルーラ氏の選挙戦術の中で見事だったのは、所属の労働者党(PT)以外の有名政治家の協力のさせ方だ。
その例となる4人を挙げてみる。まず一人目はギルェルメ・ボウロス氏。急進左派政党・社会主義自由党(PSOL)の顔役的存在だ。
PSOLは左派政党の中でもとりわけLGBTや黒人など、国外の左派が話題にしている問題に関してもっとも敏感で、盛んに啓蒙活動を行ってきた。LGBT活動の拠点である聖市パウリスタ大通りでの影響力を急速に強め、若者たちを中心に支持を集めている。
ルーラ氏はボウロス氏と接近することで同氏を支持する若年層へのアピールに繋げた。
二人目が大統領副候補にも抜擢したジェラウド・アウキミン氏だ。長年にわたり保守派の政敵だった元聖州知事の同氏が味方についたことで、かつて対立的だったビジネス、財界人らもルーラ氏に対して抱いていた過激な印象を和らげた。
三人目はアンドレ・ジャノーネス氏。この伏兵的存在がルーラ氏の選挙戦に最も大きな影響を与えたとコラム子は見ている。ジャノーネス氏は、無名の下議だったが、ネット上で人気となり、一躍大統領候補にまで押し上げられた。ルーラ氏に説得され、出馬は断念したが、そこからはルーラ氏の応援隊長として八面六臂の活躍をみせた。同氏はフォロワーを惹きつけ、一致団結した協力活動を促すことが実にうまく、ネット上での政敵潰しに長けているボルソナロ支持派に一歩も引くことなく、逆にやり返す強者ぶりを見せつけ、ルーラ陣営のムードを終始明るくしていた。
四人目は選挙戦における協力者人事の決定打、大統領選3位シモーネ・テベテ氏だ。反ボルソナロ派の女性候補ということで一次投票敗退後は、ルーラ氏支持が確実視されていたが、正式に支持を表明するや否や、彼女は自分事のように全国各地を飛び回り応援キャンペーンを実施。選挙放送にも積極的に出演し、PT陣営をも驚かせた。穏やかな口調で力強く「なぜルーラ氏でなくてはならないのか」を問いかける姿は有権者の間でも話題を呼んでいた。
今回の選挙は、専制主義的なボルソナロ氏を打倒するため、各勢力の力を見事結集させたルーラ氏の勝利だ。(陽)