日本で7月に安倍晋三元首相が銃撃されて死亡してから、狙撃犯の家族が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に家庭環境を破壊されていたことに端を発し、自民党をはじめとする政治家と旧統一教会との関係が問題視されている。こうしたことに、在ブラジルの日本人はどう思っているのか。主に各宗教に携わる1世の重鎮たちに話を聞いた。
本門佛立宗日教寺の元理事長で、現在は信徒の菊地義治さん(82、岩手県出身)は「世の中を良くするのが宗教であって、家庭が破綻するようなことをやるべきではない。(旧統一教会のやり方は)常識の範囲を超えていると思う」と話す。
ブラジル創価学会の第7総合本部長を務めた経験があり、現在は一(いち)信徒である川合昭(あきら)さん(87、秋田県出身)も、「常軌を逸してますよ。異常ですね。公明党の議員も(旧統一教会と)関係があったと言われていますが、許せませんね」と憤る。
また、ある宗教関係者は個人的な意見として「(旧統一教会は)政治家に近づきすぎで、献金を強制的にやっていることが解せない。献金は信徒が自発的にするものであって、例えば献金ができなければ労働で奉仕するというやり方もある。組織として宗教活動をしている以上、献金は大切なものであるし、だからこそ1銭たりとも無駄にはできない。(旧統一教会のやり方は)純粋な信仰とは言えない」と断言する。
一方、元ブラジル日本会議会長で、現在は清和(せいわ)友の会の顧問を務める徳力啓三さん(80、三重県出身)は、「世界中が戦争の脅威に震え上がっている時に、日本の国家は一つの宗教団体(旧統一教会)が起こした問題をいつまで引きずっているのか。どうでもいいことをほじくり出して、もっと他にやらなければならないことはある。悪いのは(旧統一教会問題を)書き立てるマスコミ」と持論を語る。
なお、読者が本紙に送ってくれた1997年1月31日付の「日伯毎日新聞」の記事によれば、旧統一教会女性組織の「世界平和女性連合」が当時、サンパウロ州パウリスタ線を中心に約120人の日本語教師派遣運動を行っていたという。また、90年代半ばには、南マット・グロッソ州に旧統一教会の聖地を建設するという話も出回った。サンパウロ市リベルダーデ区界隈でも世界平和女性連合の日本人女性信徒が活動費捻出と勧誘のためか、ボールペンなどを販売していたこともある。しかし、聖地建設案は実現せず、ブラジル内での旧統一教会の布教活動は現在、行われていないようだ。
サンパウロ州、南マット・グロッソ州などを管轄する在聖日本国総領事館でも「特に(旧統一教会との)接触は無く、(活動等の)情報も無い」と話している。