弱冠26歳で30万票得て再選=注目浴びるカタギリ連邦下議=日系社会との絆持つ待望の若手

カタギリ・キム氏

 日系政治家がいないとブラジル政界と日系社会のパイプがなくなり、政治的な繋がりが途切れる可能性がある。下議・州議選では全伯合わせて70人の日系立候補者がいた中、8人が当選した。当選者は平均8万票を獲得したが、中でも約30万票を得たカタギリ・キム氏(サンパウロ州、26歳、ウニオン党)は、サンパウロ州選出の連邦下議70人中8位という抜群の成績で2期目再選を果たした。本紙は今まで「サンパウロ州では日系社会と強い絆を持つ候補は全滅した」と報じてきたが、実はカタギリ下議には日系社会に強い想いがあることが、取材を通して判明した。広範な活躍が期待される若手日系下議に今後4年の抱負を聞いた。

 カタギリ氏は「17歳の頃から積極的に政治に参加するようになった」と振り返る。そのきっかけは「一般市民の政治への参加が可能だと気づいたことだった」と話す。
 政治について語る短い動画を投稿し始めたところ評判がよく、いろいろな人からもっと話を聞きたいとの要望を受けた。政治をさらに勉強した結果、「連邦政府は政治改善を進めるより、むしろ妨げになっていることに気付いた」という。情報発信をするうちに仲間が増え、若年層の政治的影響力を増大させるために「ブラジル自由運動(MBL)」を起こした。
 2015年、ジルマ・ルセフ大統領の弾劾運動に積極的に関り、サンパウロ市から首都ブラジリアまで1千キロ余りを1カ月以上かけて歩いて話題を呼び、フォーブス誌から「注目を浴びる30歳以下の若者トップ10」に選ばれた。活動方針は「政治を身近なものに」。「批判だけでなく解決策を提示する」と政治信条を述べた。
 「今の政府は貧困層から巻き上げたお金を富裕層に流すシステムだ」と批判する。「貧困層ほど負担が重い消費税の税制改革が必要だ」と力説した。行政改革の必要性も述べ、政治家特権である高級車、政治家用住宅、選挙活動費などの公費負担に反対し、使うことを拒否している。現在、2人の秘書と一緒に住んで住居費を節約している。
 一般の政治家に対し「議員割り当て金を使って票を得ることしか考えてない。自分の選挙地盤だけで、国全体の問題に取り組むことを疎かにしている」と批判。「連邦政府は貧困層からより多くの税金を集め、政治家特権のために使用している。政治家の高給は貧困層により支えられている」と手厳しく批判した。
 彼の選挙活動の特徴的な手法はアニメのパロディーなどをSNSに投稿して話題を呼ぶことだ。このやり方は、あらゆる層から「政治家なのになんて不真面目な」との非難を受けた。だが「国民が政治に対して持つ堅苦しいイメージを柔らかくして、より多くの人に関心を持たせるためだ」と説明する。
 「政治家だけに通じる議論をしても意味がない。政治家が国民の声を聴き、それを政治の場に活かさなくては」と国民参加の重要性を語った。
 日系社会と関りを持ち始めたのは、姉が15年に奈良県費留学生として訪日したこと。議員当選後の19年7月も日本祭りの奈良県人会ブースを手伝い、遠くに眞子様が通るのを見た。「一般のボランティアなので言葉を交わすことはできませんでした」と笑う。
 この4年間、4世ビザ問題や他の日系社会案件にも積極に取り組んだことを明かし「日系社会のために活動できることが嬉しい」と明かす。農産物輸出促進のために訪日した。「日伯の友好関係にさらに貢献していきたい」と意気込んだ。
 「4年前当時と理念は変わっていませんが、より成熟し、法律も理解し、頼りになる仲間を見つけた。今は広い視野を手に入れ、より効果的に取り組みを行えるようになってきた。政治は国全体を視野に行っているが、それ以前に一人の日系人として日系社会に特別な愛着を持っている。私に投票しなかった人のためにも活動に取り組んでいく」と抱負を語った。(仲村渠アンドレ記者)

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