南米被爆者健診医師団4年ぶり来伯=在伯被爆者約30人が受診

11月1日の日伯友好病院医療診断センターでの被爆者健診の様子(援協提供)

 南米被爆者健診医師団(松村誠団長)による被爆者健康診断が、1日にサンパウロ市リベルダーデ区の日伯友好病院医療診断センターと、翌2日にビラ・マリアナ区のサンタクルス日本病院でそれぞれ行われ、両日で約30人のブラジル在住被爆者が受診した。広島県医師会会長の松村氏を団長に、行政関係者を含めた約10人で構成された医師団一行は10月30日~11月3日の5日間にわたって来伯していた。ブラジルでの被爆者健診は1985年から隔年で実施されていたが、2020年はコロナ禍で中止となり、今回4年ぶりに実現した。
 健診は日本からの医師団とブラジル側医師の協力により、被爆者の事前精密検査の結果をもとに実施。1日は13人、2日は19人が受診した。
 2日に自身も健診を受けた「在ブラジル原爆被爆者の会」の渡辺淳子さん(79、広島県出身)によると、2019年からはブラジルに在住している被爆者であっても日本の被爆者健康手帳を所持していれば、日本政府と提携している援協傘下の日伯友好病院および日伯友好病院医療診断センターと、サンタクルス日本病院での現地治療が可能になったという。
 しかし、ブラジル全土に散らばっているブラジル在住被爆者は高齢化が進み、前述の医療機関まで出向くことが困難な状況となっている。そうした中、これらの恩恵を受けられるのはサンパウロ市に住む被爆者が中心になっている現状が課題となっている。
 今回の健診で松村団長は、ブラジルの被爆者が日本在住の被爆者に比べて糖尿病の症例が多いことを指摘。また、「被爆者の高齢化が進み介護の要望が強まっている中で、日本側がどのようにサポートしていくのかが課題」と話していた。
 被爆者の一人である盆子原国彦さん(82、広島県出身)は「最近では、日本の介護施設に入れてほしいという(ブラジル在住)被爆者の声も聞きます。今までは困難でしたが、被爆者のさらなる高齢化により、ブラジルでも自宅での介護ケアなどができるようになれば」と期待する。
 なお、南米被爆者健診医師団では、1945年8月6日の広島への原爆投下後に放射性物質を含む「黒い雨」を浴びて健康被害を受けた人々について、日本側での訴訟により従来の援護区域が広がったとして、ブラジル在住の該当者でまだ被爆者健康手帳を取得していない人への確認を呼びかけている。該当者の要件として、(1)広島(長崎は現在のところ対象外)の「黒い雨」に遭ったこと(2)障害を伴う一定の疾病にかかっていること、の2点を満たすことが必要。少しでも心当たりのある人は、「在ブラジル原爆被爆者の会」(旧ブラジル被爆者平和協会)の渡辺淳子さん(電話11・97227・5277)まで連絡のこと。

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