23日、サッカーW杯で日本代表がドイツ代表に勝利した。日本サッカー史に残る快挙だ。これほどのことは、サッカー漫画『キャプテン翼』の中でしか起こりえないと思っていた。
『キャプテン翼』はコラム子が中高生だった80年代に日本でブームだった。当時の日本サッカー界は、W杯出場はおろか、Jリーグさえ存在しない時代。『キャプテン翼』はその頃に、中学生大会ながら日本代表がドイツ代表と死闘を繰り広げ、勝利するというシナリオを書いていた。国際的には奇異に映ったかもしれないが、30年以上の月日をかけ、ついに現実のものとなった。
試合終了後、ツイッターで「オリヴァー・アトム」と検索をかけてみた。オリヴァー・アトムは『キャプテン翼』の主人公、大空翼のスペイン語圏での名前だ。『キャプテン翼』はスペイン語圏でアニメ放送されると人気を博し、同圏出身の数多くの有名サッカー選手たちは「オリヴァーを見てサッカー選手を夢見た」と語っている。
ツイッターでは、ドイツ戦で活躍した背番号10の南野を指して「彼こそが本当のオリヴァーだ」と称賛する投稿などが山のように出てきた。ものによっては「いいね」やリツイートが1万を超えるものさえあった。
「オリヴァー・ツバサ」でも検索をかけてみた。こちらがブラジルにおける大空翼の呼称だ。投稿数やリツイートの数は、スペイン語のものに比べると多くはなかったものの、ものによっては千以上の「いいね」がついてるものがあった。
以前、知人から聞いた話では、ブラジルで『キャプテン翼』は「日本人がサッカーのヒーローというのが考えられない」とあまり人気が出なかったという。
ブラジルでアニメ放送が開始された1994年頃は、ジーコが鹿島アントラーズに加入して、日本がW杯に出場できるよう、日本サッカー界の実力底上げを手伝っていた時期だ。ブラジルで「内容にリアリティがない」と見られても仕方なかったと思う。
それでも1994年のアニメ放送を皮切りに、2002、2018年とブラジルでは3度、アニメ系ケーブル・テレビで放送されるなど人気を博している。今回の快挙でブラジルのサッカーファンに日本代表がアピールできたのは嬉しい話だ。
日本は1996年アトランタ五輪でブラジルに勝利したことがある。この時の快挙は「マイアミの奇跡」と呼ばれている。今度はW杯でブラジルを倒す日が来るかもしれない。難しいかもしれないが、奇跡に期待したくなってきている。(陽)