『ふろんていら』75号で終刊に=「執筆者の皆さんに心から感謝」

「この辺が潮時」と語る伊那宏さん

 伊那宏さん(80歳、長野県伊那市出身、本名=菅沼東洋司)=サンパウロ州アルミニオ市在住=が主宰して18年間続けてきた詩歌サロン『ふろんていら』が、このたび75号で終刊を迎えた。
 原稿集め、編集から印字校正、製本、発送まで全ての作業を主宰者本人が担当した。年4回、多い時には50部前後も発行していた。元々は伊那さんが別に発行していた個人文芸誌『国境地帯』の詩歌欄だった内容を独立させたもの。
 川柳仲間の今立帰さんもその中で「長い歳月に亘り、慈愛を込めて育て上げた文芸誌に、自らの手で幕を下ろすということは、恰もわが子に別れを告げるような、身を切られる思いに違いない。寄る年波には逆らえず、潔い決断だったと思うのだけれど、兄の複雑な心情を思いやる時、私は掛けるべき言葉を見いだせないでいる」と綴った。
 国際日本文化研究センター名誉教授の細川周平氏も《終刊を祝す》の中で交友の経緯を振り返りつつ、「愛読者には辛いが、立派な決断だと思う。惜しみつつ拍手で見送りたい」との言葉を贈る。
 伊那さんは終刊の辞の中で「18年間、多くの仲間に恵まれて、移住者激減という時代の荒波を共にかい潜りながら、この小さな砦を死守してきたが、寄る年波には抗えず、「この辺が潮どき」と判断して、苦渋の思いの中でこの一文を綴っている」と記した。
 24日に編集部を訪れた伊那さんは「この18年間でどんどんコロニアの文芸人口が減り、同人誌が消え去った。おかげで幾人かは合流してくれ、受け皿になっていた。執筆者の皆さんには心から感謝している」と語った。

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