大統領選での票の無効を訴えたことで所属する自由党(PL)が巨額の罰金を科せられる中、ボルソナロ大統領は当選したルーラ氏と同氏所属の労働者党(PT)のグレイシ・ホフマン党首が吐いた自身への暴言に対する訴えを起こした。25、26日付現地紙、サイトが報じている。
PLは22日、大統領選の決選投票で電子投票機の59%に不備があったとして無効化するよう訴えて、ボルソナロ氏の勝利を正当化しようとした。だが、その主張は訴えを起こす前後から矛盾を指摘されており、証拠も示せなかったため、選挙高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事が23日、訴えを却下した上、「悪意を持って選挙システムを疑った」として、約2290万レアルの罰金支払いと政党支援金の凍結を命じた。
罰金の支払い義務が課されたのは「大統領選でのボルソナロ氏のコリガソン(連立政党)」で、進歩党(PP)と共和者(RP)も連帯責任を負わされた。だが、両党はPLからは何の相談もなかったとし、「我々は選挙の結果を決して疑ったりはしない」として無関係を主張。モラエス長官もこの主張を認めたため、支払い対象はPLのみとなった。
PPとRPの態度は大統領選の結果への見解でPLを孤立させる形となった。この訴えを行ったPLのバルデマール・コスタ党首は、「党の支部長クラスの連中に殺されそうだ」と、PL内でも意見がまとまってなかった状態での訴えだったことを明かしている。
この一方でボルソナロ氏は25日、最高裁に対してルーラ氏とグレイシ氏の2人を名誉毀損で訴えている。
訴状によると、ルーラ氏とグレイシ氏が10月にリオ市アレモン地区で行った選挙集会で、2018年3月に起きたマリエレ・フランコ元リオ市議殺害事件と、今年9月にマット・グロッソ州で起きたルーラ氏支持者のベネジト・カルドーゾ・ドス・サントス氏の殺害事件の殺害指令を出したのはボルソナロ氏であると示唆したとしている。
ボルソナロ氏は、ルーラ氏陣営が選挙期間中に自分のことを「ジェノシダ(大量殺戮者)」と呼んだことや、「人肉食に興味がある」と指したことも問題視している。ジェノシダは、ボルソナ政権がコロナ対策で誤って世界2位の死者を出したことに関して主に左派勢力が2020年頃から使い続けている呼称だ。また、人肉食発言はボルソナロ氏が2016年に話した動画をルーラ派が選挙中に拡散した内容だ。選挙高裁が「発言の本意ではないのに、そこだけが抜き出されて拡散されている」と判断して動画削除を命じた経緯がある。
ボルソナロ氏は23日、皮膚の感染症が癒え、19日ぶりに公務に復帰。24日にはモラエス判事のPLへの命令を受けて、軍高官らと会議を行った。
ボルソナロ氏が公務に復帰したことは、抗議運動を継続している同氏の支持者を喜ばせた。ボルソナロ氏は26日、リオ州レゼンデにある軍学校のイベントに参加。支持者たちはそこでも軍事介入を求める声をあげたが、ボルソナロ氏は何も語らないままだった。