軍事介入の兆候受け、大統領承認式日を前倒し=予備役軍人221人が投票結果抗議の公開書簡

トラヴァッソス氏(左)とワセフ氏(twitter)
トラヴァッソス氏(左)とワセフ氏(twitter)

 ボルソナロ大統領支持者による軍事介入を求める動きが一部の軍関係者の間でも起こり始めていることから、ルーラ次期政権のディプロマ(認証)授与式が1週間前倒しの12日になり、軍が対策を考え始めるなどの事態となっている。11月30日付現地紙、サイトなどが報じている。
 ボルソナロ氏支持者による抗議活動は大統領選の終わった10月30日夜から続いている。最近は、サッカーW杯でブラジル代表(セレソン)が試合を行う時間帯に合わせて、全国の軍関連施設の前で軍事介入を求めるデモが行われている。
 この動きに対してボルソナロ氏自身は沈黙を続けているが、同氏の熱心な支持者や一部の軍関係者が抗議活動に賛同し、軍事介入支持を示し始めている。
 11月28日、予備役軍人221人が大統領選の結果に関する公開書簡を提出した。これは、国防省がサイトに掲載した軍による投票結果の監査報告の中に「大統領選では不正の痕跡は見られなかったが、不正が存在しなかったということではない」との記載があったことに言及したものだ。パウロ・セルジオ・ノゲイラ国防相は軍による初の投票監査を申し出て、選挙高裁に受け入れられた。電子投票機には1996年の導入以来一度も不正報告はないが、それでも軍は投票結果に懐疑的だった。軍の監査報告では、一次、決選投票とも不正の痕跡は見つからなかったが、今後も継続して調査することを選挙高裁に求めている。
 この公開書簡では、軍の司令官たちが軍施設の前で抗議活動を続けている大統領支持者たちに対応することも求めている。ただしガゼッタ・ド・ポーボ紙30日付でパウロ・シャーガス予備役将官は「軍は退役軍人の指図を必要とせず、その信頼のみが必要だ」と一部の退役軍人の動きを諫めるコメントをした。
 また、11月29日には2016年から大統領府安全保障室(GSI)で勤務する海軍所属のロナルド・リベイロ・トラヴァッソス氏が、11月24日にブラジリアの陸軍本部前での軍事介入を求める抗議活動にセレソンのユニフォームを着て参加し、「ラドロン(泥棒、ルーラ氏のこと)に大統領就任はさせない」などと動画で語っていた。
 トラヴァッソス氏はデモに参加していたボルソナロ氏の元弁護士のフレデリク・ワセフ氏と写真に収まっている。フォーリャ紙が入手した別の録音では左派との間での市民戦争を辞さないと取れる発言も行っていた。
 同日は、2018年にルーラ氏の最高裁での裁判の前に最高裁判事らにルーラ氏を逮捕するよう圧力をかけたとされる元陸軍司令官のエドゥアルド・ヴィラス・ボアス氏が軍事介入を支持するかのような言動を行った上、ペンテコステ系の福音派大物牧師シラス・マラファイア氏がボルソナロ大統領に軍に介入させるよう求めてネットが炎上するなどの事態が起きている。
 こうしたこともあり、選挙高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス長官はこの日、当初は19日に行う予定だった、ルーラ氏とアルキミン氏が正副大統領に当選したことを認めるディプロマの授与式を12日に前倒しすることを認めた。授与式の前倒しは、抗議活動の過激化と長期化を懸念したルーラ氏が求めていた。
 また、軍の高官らも予備役軍人たちが提出した公開書簡に対して不快感を示しており、処罰を検討するなどの動きに出始めている。

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