ルーラ次期大統領の労働者党(PT)が11月29日、次期下院議長選でボルソナロ大統領と懇意だったアルトゥール・リラ氏(進歩党・PP)を推すことを正式に表明。意外な選択と見られているが、その背後にはジウマ政権での苦い経験があるという。11月30日~12月1日付現地紙、サイトが報じている。
PTがリラ氏を支持することは、同党下院リーダーのレジナルド・ロペス下議が行った記者会見で明らかになった。記者会見にはブラジル社会党(PSB)や緑の党(PV)、ブラジル共産党(PCdoB)の代表も加わった。
この会見でロペス下議は、リラ氏を支持する理由として「今回の国の再建をかけた大統領選において、リラ氏はいち早くルーラ氏の当選の結果を認めてくれた」とし、「ルーラ政権と連邦議会において安定感のある与党グループを構築することができると判断した」と語った。
ロペス氏はさらに、「このところリラ氏とは多くの話をした。同氏は飢餓対策をはじめとした我々のプロジェクトに賛同してくれた。今日(11月29日)、上院に提出された(ボルサ・ファミリアの月額600レアル支出のための)憲法補則法案の承認にも理解を得た」と語った。
PTのリラ氏支持を意外と思った人たちは多い。それは、リラ氏はボルソナロ氏と距離が近い人物との印象が強かったためだ。PTは2016年、ジウマ大統領(当時)と敵対するエドゥアルド・クーニャ(当時)下院議長にジウマ氏の罷免審議を進められ、政権を失った経験もあり、党内部にはこの支持表明に対して難色を示す向きも少なくない。
だが、BBCブラジルの報道によると、ルーラ氏をはじめとする党上層部は、それがゆえにリラ氏との関係を強くする必要があると見ているという。それは、クーニャ氏とジウマ氏の関係が険悪となった理由として、2015年の下院議長選でPTがこぞってクーニャ氏に反対票を投じたこと、当選後もジウマ氏がクーニャ氏と良好な関係を築くことに消極的だったことがあげられているからだ。
クーニャ氏は当時、所属していた民主運動(MDB)のみならず、中道勢力セントロンのリーダー格で、これがもとでジウマ第2期政権の議会での影響力が後退していた。
リラ氏には既にボルソナロ氏の自由党(PL)やウニオン・ブラジルといった大型政党が支持表明済みの上、その他には強い対抗候補もいないことから、再選が確実視されている。左派勢力だけでは議会の3分の1にも満たないPTとしては、あえて逆らわない方針のようだ。
PTのリラ氏支持の報道を受け、ボルソナロ大統領は連邦議会の予算案審議時の報告官の裁量による議員割当金の支払いを止めるように命じた。「秘密予算」とも呼ばれる報告官裁量補正予算はルーラ氏が廃止したがっているものだが、リラ氏を筆頭とする一部の連邦議員はその必要性を強く主張している。