角野さんは、2020年からアメリカに住み始めた。移住理由は「自分で生きている」実感を得るためだという。
「大会で好成績をあげると、周りからチヤホヤされるようになりました。必要なことは周りの人が準備してくれるようになって、それはとても心地いい、ありがたい環境ではあるんですが、引き換えに自分で生きている感覚が失われていくような気がしました」
「自分は生きているのか、それとも生かされているのかをよく考えます。日本にいるころ、通勤途中の疲れた様子の人を見て、なぜやりたくないことをしているのだろうかと疑問に思う事がありました。自分は常に好きなことに挑戦して生きてこれたから彼らのことを理解できなかったんです。皆は社会に生かされているけど、自分は自分で生きていると思っていました」
「自分は自分で生きている」との自負を抱え、アメリカに渡った。しかし、アメリカでコロナ禍によるロックダウンが始まると、この先自分はどうすればいいのかがわからなくなった。
「自分は自分で生きていると信じていたけど、自分も社会に生かされていたのだと気づきショックを受けました。そこからは自分が何をしたいのか改めて考えるようになりました。毎日一歩一歩踏み出して挑戦するよう行動しています。アメリカは自分で行動しないと生きていけないところです。『俺は何がしたいか』が重要になります。これは日本にいたら気づいてなかったと思います」。
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「自分で行動しないと生きていけない」というアメリカの自己責任文化は、角野さんの遅刻癖をたちまち直してしまったそうだ。「日本にいたときは、誰かがなんとかしてくれるだろうと思ってしまい、遅刻や物忘れが本当に多くてひどかったですね。アメリカは物価が高いので、節約して買い物する習慣もついたのですが、下調べして計画を立てて行動すると、自由に使える時間やお金が増えるという事にも気づかせてもらいました」と頷いた。(続く、淀貴彦記者)