聖南西地区にあるヴァルゼン・グランデ・パウリスタ文化体育協会(谷口勉会長、VGP文協)は10日午後7時、創立90周年式典を同会館で開催した。気温34度の汗ばむ気温の中、背広姿の団体役員や会員ら約300人が集まって祝った。同協会は聖南西で最も早く発足した団体で、同日本語学校も88年を迎えるなど子弟教育にも熱心だ。旧コチア産業組合中央会とも深い関わりがあり、コチア解散後の困難も乗り越え、今日まで絶えることなく歴史を刻んできた。いよいよ迫って来た100周年を視野に入れながら、さらなる発展を誓いあった。
式典に先立って行われた午後6時からの仏式先亡者追悼法要では、イビウナ日伯寺の桜井聡祐僧侶が導師を務めた。朗々と響く読経の中、来場者はしめやかに菊を献花した。
日伯両国歌の斉唱が行われた後、挨拶に立った谷口会長は「90年前にジャガイモ生産者が入植して日本人会を作ったところから出発し、2年後には日本語学校を創立した。以来、剣道、相撲、陸上、野球なども盛んになった」と歴史を概観した上で、「100周年をどう迎えるか。青年部と婦人部を盛り上げて活発化させれば、必ずや立派なものができる。今日はとても感動的な式典になった」と述べた。
VGP文協の会員数は128家族。青年部には約50人が所属しており、毎週集まってバレーやサッカーなどを楽しんでいる。和太鼓活動を行う鼓魂(こだま)会にも15人が所属している。式典では青年部員らが裏方として運営を支えている姿が見られた。
聖南西文化体育連合(UCES)の古川シルビオ会長は、自身とUCES初代会長がVGP出身であり、他にもスポーツ関係で功績を残した人物が同地から輩出されてきたことを振り返り、「2年後の学校創立90周年も祝うべき」と述べた。
同校教師によれば、生徒数減少などを受けて2018年から、授業内容を日本語だけでなく、体育、工作、絵画、調理実習など総合的な日本文化を教える科目に変えた。その結果、ブラジル人生徒が増え、現在は28人が学んでいるという。
来賓の当会の石川レナト会長は「VGP文協は、ブラジル日本文化福祉協会主催の国士舘さくら祭り最大のパートナー。100周年に向けてこの協力関係をさらに拡大していきたい」と述べた。
ジョズエ・ラモスVGP市長は「市制はまだ41年だが、VGP文協は2倍以上の歴史を持っている。日本文化がこの町の発展に寄与していることは間違いない。90周年に心から祝福を贈る」とお祝いの言葉を述べた。
JICAブラジル事務所の江口雅之所長の挨拶に続き、桑名良輔在サンパウロ総領事は「パイオニアに心からの敬意を示したい。UCESの団結の強さを感じる。若者がこの素晴らしい活動を継承してくれ、立派な100周年を迎えられることを期待している」と語った。
90周年記念プレート除幕の後、歴代会長に記念品として胡蝶蘭が贈呈され、ケーキカットが行われた。桑名総領事が乾杯の音頭をとって親睦夕食会へと移り、来場者は各家庭が誇る多彩な同地名物の美味しい持ち寄り料理を競うように皿に盛った。
アトラクションとして、学校生徒とカラオケ部による合唱、鼓魂会による力強い演奏が披露され、和やかに節目を祝った。
70年代に会長を務めた古川信夫さん(88、2世)は「ボクはここ生まれ、ここ育ち。今までこうして続いてきたのは、皆さんの協力のおかげ。色々な問題もあったけど力を合わせたおかげで乗り越えられた」と感慨深そうに語り、隣にいた翠(みどり)夫人(82、モジ出身)も「結婚してから60年間ここに住んでいる。団体がまとまっていてとても良い所です」と笑顔を浮かべた。