スマホ無し、生徒ら団体行動学ぶ=第29回聖南西林間学校

スポーツを行う生徒たち

 聖南西教育研究会(渡辺久洋会長)主催の第29回聖南西林間学校が12月11、12日、イビウーナ文化体育協会会館で行われ、同地区の日本語学校全8校から12~16歳の生徒33人、17、18歳のスタッフ5人、教師約15人が参加した。林間学校は毎年、同時期に2泊3日で行われているが、一昨年はパンデミックのため中止。昨年は1日だけで行い、今年はコロナ禍がまだ完全に収束していないこともあり、1泊2日の日程で実施された。
 聖南西教育研究会では、日頃の日本語の学習とともに地区内の生徒間の交流にも力を入れており、林間学校の他にも、「低学年デイキャンプ」「青空スポーツ教室」「お話学習発表会」といった行事を行っている。これらの行事が日本語学校に通い続ける動機づけになっている生徒も少なくないといい、今回も林間委員会を中心に地区教師が半年以上にわたり、スポーツやキャンプファイアー、グループ活動など各プログラムを円滑に進めるべく計画、準備してきた。
 開校式では、地元イビウーナ文協の前田博文会長が挨拶。続いて渡辺研究会会長からは、「今年は2日間しかないが、それでもこうして実施できるのはとても恵まれていて幸せなこと。皆が今日参加できるのも親や学校の先生、学校の仲間達がいるからこそで周りの人たちに感謝の気持ちを忘れないように。今回の林間学校が自分や参加者皆にとってどれだけ楽しい時間となるかは、自分の気持ちと行動次第なので、初めから勇気を出して声をかけ、忘れられない思い出を作ってください」という言葉がかけられた。
 スポーツでは、班対抗ミニ運動会やタグ取り大会が行われ、勝利を目指し、力を合わせたり応援したりする姿が見られ、試合に負けても班内で笑顔で励ましあったりするなど、ただスポーツの勝負を競うだけではない時間となっていた。キャンプファイアーではゲームをし、輪になってフォークダンスを踊りながらテーマソングも歌った。
 2日目の午後にはグループ発表があり、今回の林間学校のテーマソング「やってみよう」をコンセプトに班それぞれが創作し練習してきたダンスや寸劇を披露。参加した生徒からは今年は練習時間が少なく大変だったという声が聞かれたが、練習する過程で班員が一緒に話し合うなど、コミュニケーションをとっていた。
 この2日間、生徒たちは自ら起き、共に食事を作り、スマホ使用禁止のもと、様々な活動を通じて人との触れ合い・交流の時間に身を浸した。生徒同士の交流や新しい仲間を作るのはもちろんのこと、協力することや話し合うことの大切さ、また、しおりを見て自分たちで考えて集合・行動することなどを体現。団体行動・集団生活に大事な様々な事を学び、学校の枠組みを超えた“聖南西日本語学校”の教育活動の場となっていた。

キャンプファイアーの様子

 感想発表時間では、4回目の参加となる高橋ジョー君(14、レジストロ校)が「これから社会に出たら、絶対に人と関わらなくてはいけない。このような行事は人格を形成するし、社会に出てから絶対に役に立つのでとても大切だ」と強調。2回目の田中せいや君(14、コロニア・ピニャール校)も「このようなイベントは大人になってからはなかなかなく、僕たちのこの年代でしかできないことで、それに参加できるのはとても恵まれている。友達をつくることは大事なことで、これからも続けたいし、またこれから参加する子達に伝えていかなければいけない」と、林間学校の開催意義を感じとっていた。
 スタッフとして参加した下田としお君(17、ピラール・ド・スール校)や井伊さゆみさん(17、同校)は、「林間学校に参加できるのは、これが最後」と涙ぐみ、参加してきた子供達にとって、この林間学校はただの楽しい交流イベントではなく、それ以上のものになっていることが伺えた。
 ソロカーバ日本語学校の教師達は「パンデミックの影響でこの年代の生徒数が減った影響もあり、以前と比べ参加生徒は半数まで減ってしまった。また2年間、交流行事がほぼ中止となっていたので、今年は半数以上の生徒が初参加で何年も積み上げてきた交流がない状態だった。それでも、1泊2日で行うことで、交流や友達作りが活発に行われている様子を見て、今回が林間学校の再スタートだと感じた」と話していた。
 渡辺会長は、「最後の食事時の様子を見ていると、どの班も一人ぼっちになっている子がおらず皆にぎやかに話していて、たった1日でここまで変わるのかと少し驚いたし嬉しかった。普段物静かな子やスマホばかりして、人と関わるのがめんどうくさい態度をとっている子達も積極的に話していたので、今回の参加をきっかけに、来年以降の彼らの行動にいい影響、いい変化があったら嬉しい」と期待していた。

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