アマゾン食材で日本料理に挑戦=一汁三菜文化をブラジルに広める=JICA隊員の小笠原純子さん

料理講習会の参加者のほとんどが現地のブラジル人(前列の右から4人目が小笠原さん)

 山梨県甲府市に位置する「野口料理学園」校長の小笠原純子さん(74歳)は、現在JICAの海外協力隊員としてパラー州ベレン市で日系人や非日系人に料理を教えている。小笠原さんに来伯の経緯と意気込みを聞いてみた。

小笠原純子さん

 小笠原さんは山梨県甲府市で生まれた。母が1951年に野口料理学園を設立したこともあり、日本女子大学を卒業後母の助手として同学園で働いた。働く中で徐々にその仕事に興味を持ち始め、料理の勉強を続けた。しかし、小笠原さんが45歳の時に母が突然倒れ、急きょ同校の校長を継いだ。

初めてのブラジルへ

 1984年12月、サンパウロ市で移民研究をしていた学生時代の友人から「お正月料理を作りに来ない?食材は何でもある!」と誘われ、単身でサンパウロ市へ行った。彼は学生時代のサークルの友達で、後の夫となる人物だった。
 初めてのブラジルは思い描いていたのとは程遠く、「食材の豊富さ」には腰が抜けるほど驚いたという。想像していたよりも日本野菜の種類が多く、熱帯や亜熱帯のフルーツが豊富で値段も安かった。そして、なにより日本で失われつつあった、子供の頃の懐かしい「和食」が思い出せたという。それを見た小笠原さんは「ブラジルの食材を使って和食を作りたい」と心から強く思い始めた。
 小笠原さんは、それ外にも、ブラジル特有の文化には驚きの連続だったという。そのうちの一つが、ブラジルの濃くて甘いコーヒー。当地のコーヒーは深煎りが一般的で、味が濃い。
 その上、砂糖をたっぷりいれて飲むのが主流だ。だが濃くて甘いコーヒーには理由がある。それはブラジルの料理は脂っこいものが多いため、濃いコーヒーが消化を助けてくれる効果があると見ている。
 そんな脂っこいものが多いブラジル料理の中でも「フェイジョアーダ」は特に気に入った。豚の耳や足や干し肉などを黒豆と煮込んだ代表料理であり、油で炒めたご飯、コウベ・マンテーガ、マンジオッカの粉などと一緒に食べる美味な、そして栄養的に優れたこの食べ方が気に入った。
 2週間の滞伯期間を終えた小笠原さんは、一旦日本に帰国した。その後、その男性と結婚して新婚旅行でもベレンやブラジリアなどの都市を回った。

計量する料理法を指導

 2016年に今度はサンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市の日系人協会の婦人部に、和食の普及のためにJICAから派遣された。モジ市で料理講習会をやり始めた時も、ブラジル人らしい特徴が見られたという。
 小笠原さんが講習会で野菜の重さを計っているのを見て、参加者が驚いた顔をしたことだ。参加者らは当初、はかりや計量スプーンを使うことに疑問を抱いていた。だが講習を始めて1年が経つ頃には、参加者は料理の基本「計量することの大切さ」を理解してくれた。
 それを見て「自分の仕事に信念を持っていたら、それは相手に伝わる」と心の中で強く感じたそうだ。

ベレンでの和食普及活動

 小笠原さんは今回8月にベレン市に着いたばかり。現段階ではまだ食材の調達段階。目標の「アマゾン食材を使った和食料理」を創れていない段階だ。だがアマゾン料理によく使われる、キク科の植物「ジャンブー」には驚いたという。
 ジャンブーは、スープなどの煮物に使われることが一般で、食べると舌がしびれる感覚が味わえる。小笠原さんは、ジャンブーの佃煮とそれを具にしたおにぎりを作った所、生徒達に大好評だった。
 今後はベレンで「一汁三菜の日本食の文化を普及したい」と抱負を語った。


ジャンブーの佃煮レシピ

ブラジル製の器に盛った、ジャンブーの佃煮

 材料
・水、かぶる程度
・ほんだし、小さじ1/3
・醤油、大さじ3~4
・みりんまたは酒、大さじ2~3
・砂糖、大さじ1(好みで)
 ジャンブーの葉を茎からとり、よく洗い、熱湯に入れ、一度沸騰するまで茹でた後、水で冷やす。充分水を絞り。水とほんだしを入れ、弱火で汁気がなくなるまで煮る。葉が柔らかくなったら、調味料を加え、焦がさないようにゆっくりと煮る。少しだけ汁が残っているところで火を止めて冷めるまでおく。
 味は佃煮と似ており、甘じょっぱい。舌がしびれるような感覚が味わえる新感覚な料理。ぜひ試してみてはどうか。

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