【2023年新年特集号】ルーラ次期大統領=農業と自然の調和求める=環境犯罪の取締強化を明言=アマゾン基金支援が復活へ

COP27でのルーラ次期大統領(11月17日付アジェンシア・ブラジルの記事の一部)

 ルーラ次期大統領(労働者党・PT)が11月17日、エジプトで開かれた国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)で、アグロビジネスの重要性などを認めた上、「真のアグロビジネスは環境とコミットしている」とコメントしたと同日付伯字サイトが報じた。
 ルーラ氏は選挙中から飢餓撲滅を最優先事項の一つとしてきた。また、当選確定直後の演説では、森林伐採ゼロを追求する事や、バイオエコノミーとクリーンで再生可能なエネルギーへの投資誘致の必要も強調した。
 新政府構想では、気候変動との戦いとの関連で得る資金や外国人投資家の投資が今後数年間の経済を牽引する鍵の一つとなるからだ。

歓迎されたエジプトでの演説

伯国の温室効果ガス排出量の推移(気候観測のデータ、11月15日付G1サイトの記事の一部)

 ルーラ氏をCOP27に誘ったのは法定アマゾン内9州の知事達で、エジプトの大統領もぜひと声をかけた。また、伯国が再び、環境政策などに積極的に取り組む事を期待する人達は、その演説を期待して待っていた。
 第1期、第2期ルーラ政権は伯国最大の気候変動対策(温室効果ガス排出量削減)でもある法定アマゾンの森林伐採削減を進め、環境保護法を制定した事などを知っているからだ。
 また、大統領選の最中には持続可能な鉱業をと訴え、金やマンガンなどの不法採掘抑制や先住民保護などの必要を主張。COP27でも、環境犯罪とは断固として戦う姿勢を示すと共に、先住民問題などを扱う原住民省の創設を約束した。
 さらに新政権のあり方などを語り、世界との絆を回復させ、世界規模での飢餓との戦いを支援し、アフリカやラ米の貧しい国々と協働するために「伯国が戻ってきた」と語った時には拍手も起きたと報じられている。

ノルウェーやドイツが支援再開へ

アマゾン基金の復活を命じた最高裁(Marcello Casal Jr./Agencia Brasil)

 環境や気候変動に対する取り組みへの期待は、当選の翌日の10月31日に起きたノルウェーによるアマゾン基金への資金拠出再開の約束にも表れた。この基金は法定アマゾン保護のための活動資金で、開設当初からノルウェーとドイツからの資金がその大半を占めていた。ドイツも日を置かずに、資金拠出再開を約束した。
 ノルウェーやドイツは伯国での森林伐採や森林火災の増加を理由に、2019年以降、同基金への資金拠出を中断。この事は、森林伐採や森林火災を抑制するための活動やプロジェクトの継続を困難にしていた。
 同基金が実質的に機能しなくなり、環境監視団体などの活動にも支障が出ている事を受け、野党側は2020年に最高裁に提訴。21年10月に審理が始まり、11月3日に同基金の復活(凍結状態になっている基金15億レアルの解除)が命じられた事で、連邦政府は60日以内の資金解除が必要となった。
 同基金は政府予算とは別枠の活動資金として扱われるため、両国からの資金拠出再開により、生物多様性保全のためのシコ・メンデス研究所(ICMBio)などの環境監視団体の活動が正常・活性化する事が期待されている。新政権への移行作業班は12月6日、年明け早々に33億レアルが解除される可能性を明らかにした。

侵食された土地の回復や生産性向上を

伐採が進む法定アマゾン(Marizilda Cruppe/Divulgação)

 ルーラ氏はCOP27で、「伯国には回復可能な土地が数百万ヘクタールあり、作物栽培や牧畜のための森林伐採は不要。材木を切り出したいなら植林すれば良い。真の農業企業家はどの地域では焼き畑をやってはならないか、どの地域の森は伐採してはならないかを知っている。間違った事をすればそのツケは自分達に返ってくる事も承知しているはずだ」と語った。
 また、新政権では飢餓や貧困と戦い、社会に密着し、かつ合法的な政策を採用できるようにするため、種々のカンファレンスを開催する事なども強調。伯国には既にアグロフォレストリーの成功例があり、現場のテクノロジーに重点を置き、再生可能で持続可能な農業を探す事でアグロビジネスが戦略的な味方になると確信しているとも述べた。
 実際、COP27では伯国の農業関係者を指導した事がある専門家が伯国のアグロビジネス従事者を褒めそやす場面もあった。5G普及を念頭に置き、ドローンや管理ソフトを使った発育状態や土地の管理も拡大、浸透し始めている。
 ルーラ氏は、新政権の目標はバランスの取れた生産、脱炭素、生物多様性の保護で、農家や牧場主の収入増も図ると発言。飢餓対策と貧困対策の一環として家庭農を大切にする姿勢は新政権でも貫かれるはずと報じられている。
 また、人間一人では気候の惨劇に対して無防備である事や、食の安全を脅かされている人が9億人もいる事、地球温暖化のため2030~50年には熱中症による死者が年間25万人増える可能性がある事、温暖化による経済的な影響は年間20億から40億ドルに及ぶ事などにも言及。世界と伯国の食糧確保と共に、法定アマゾンの保護も含めた気候変動対策にも積極的に取り組んでいく意向を表明していると報じられている。

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