ブラジリアで1日、ルーラ大統領の就任式が行われた。同氏の大統領就任は2010年以来3度目だ。ボルソナロ前大統領が不在のために注目されたたすき(現職大統領のみが着用可能な大統領綬)の受け渡しは、多人種・複階層で構成される国を象徴する「民衆代表」が行い、民主主義と団結を強調した。1、2日付現地紙、サイトが報じている。
就任式には慣例に従い、大統領と副大統領が夫妻で参加。ルーラ大統領とジャンジャ夫人、ジェラルド・アルキミン副大統領とルー夫人が顔を揃えた。4人はロールス・ロイスのオープンカーで10分ほどパレードを行った。当初はボルソナロ派による攻撃などが懸念されていたが、あえてオープンカーでのパレードを敢行し、問題は起きなかった。
ルーラ大統領らはまず連邦議事堂を訪れ、連邦議員や最高裁判事らに迎えられた。ここで正式に就任が宣言され、誓約も行われた。
ルーラ氏は約30分間演説を行い、昨年10月の大統領選は「民主主義の輝かしい勝利だ」と語り、連邦議員たちにも「国の再建」を強く求めた。
正副大統領夫妻はこの後、大統領官邸に向かった。大統領のたすきを渡す儀式はここで行われるため、三権広場はルーラ氏の労働者党(PT)のイメージカラーである赤を身につけた支持者らで覆い尽くされた。
今回の就任式では誰が大統領のたすきを渡すのかが問題となっていた。それはボルソナロ前大統領がたすきを渡すのを拒み、12月30日に米国フロリダ州に飛び立ったためだ。ブラジルでは1972年以来、前大統領がたすきを渡して来たが、大統領職を代行したモウロン氏も以前から、たすきを渡すことを拒否し続けていた。
事前には政界の誰かが渡すと予想されていたが、最終的には一般人8人による「民衆代表」が渡すことになった。代表団は10歳の黒人少年から93歳の先住民リーダー、溶接工や料理人など、様々な世代階層や人種、性別の人と犬が含まれていた。ルーラ氏に直接たすきをかけたのはゴミ収集を生業とする33歳の黒人女性のアリーネ・ソウザ氏だった。
ルーラ氏は就任挨拶で、自身が政権を離れていた12年の間に貧困と社会格差が拡大したことを嘆いた。ルーラ氏は「街角では貧乏な一家の母親がごみ箱をあさって子供たちのために食べ物を探し、一家は寒さや雨、恐怖にさらされながら路上で寝る。子供たちはガムを売ってわずかばかりの金を求め、生計を助けている」と語るうちに感極まり、涙を流した。
就任式や晩餐会には世界54カ国の首脳や代表が参加した。その多くはポルトガルを宗主国とする国や中南米の国だった。
また、省庁間広場では1日午前10時から2日未明まで、ルーラ氏の就任を祝うコンサートが行われ、延べ28万人が参加した。参加したアーティストは文化相に就任したマルガレッテ・メネゼス、カエターノ・ヴェローゾやマルチーニョ・ダ・ヴィラらの大物歌手、女性歌手のガビ・アマラントスやドゥーダ・ビート、トランスジェンダー歌手のパブロ・ヴィッタルなどの現在大人気の若手まで様々で、芸能界でのルーラ氏の支持の高さを示した。ルーラ、アルキミン両夫妻も参加し、熱狂的に迎えられた。
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1月1日に就任式を行ったのはルーラ大統領、アルキミン副大統領だけではない。各州の正副知事も1日が就任式だった。サンパウロ州議会ではタルシジオ・デ・フレイタス知事(共和者・RP)の就任式が行われた。ボルソナロ政権の閣僚で前大統領が推していたタルシジオ氏は就任挨拶でボルソナロ氏のことを「他の人は見えていなかったものが見えた」と賞賛。ボルソナロ氏に感謝を示した。また、昨年まで28年間州知事を務めてきた民主社会党(PSDB)の主な知事の名を出し、敬意を示した。また、州議会の前ではルーラ大統領の就任式が行われてもなお抗議活動を続ける人が集い、タルシジオ氏の就任を祝った。