【既報関連】8日にブラジリアで起きたボルソナロ派の暴挙の爪痕は今も生々しいが、ルーラ大統領は9日に持たれた三権の長達との会合や知事との会合で改めて、民主主義の重要性を強調し、国が一つとなる事を求めたと9~10日付現地紙、サイトが報じた。
昨年の大統領選の結果を認められないボルソナロ前大統領の支持者達が起こした、連邦議会や最高裁、大統領府への侵入、破壊行為は、民主主義を攻撃する行為として国内外から強い批判を浴びた。
8日の暴挙は、首都の陸軍本部前で軍介入を求めていた人達に全国各地からバスで参集した人達が合流して起こした。最高裁のガラス壁を壊す人や散乱したガラスや池に投げ込まれたイスなどを片付ける人達、割られたガラスの穴から投げ落とされた机、壊されて床に散る他国からの寄贈品や絵画、歴代大統領の写真などは国の威信も含めた爪痕の大きさを物語る。
全国の知事との会合には、野党にあたるサンパウロ州知事らも含めた全連邦自治体の知事や代理が参加。全国市長前線からの参加もあった。
会議の口火を切ったジャデル・フィーリョ都市相は、民主主義のために一致する必要を強調。ローザ・ウエベル最高裁長官は知事達の連帯に感謝しつつ、大法廷を中心とする内部と外部が共に破壊行為の被害に遭ったが、2月1日からは通常通り、三権の一翼、憲法の番人としての最高裁の務めを果たす事を保証すると明言した。
知事達も、憲法と民主主義を順守し、国民の意思表示としての選挙の結果を尊重する事などを主張。会議前に州の三権の長の名前で暴挙を批判し、民主主義擁護を主張した州もあり、軍施設の前での抗議行動参加者のキャンプの解体も進んだ。
知事達は会議終了後、ルーラ氏の呼びかけに応じ、連邦議員や最高裁判事らと共に大統領府のスロープを下り、三権広場を経て最高裁を訪問。暴挙に屈しない姿勢も示した。
また、9日は下院、10日は上院の順で、ルーラ大統領が8日に宣言した連邦直轄区の治安面への連邦介入を承認。上院では反民主主義的行為に関する議会調査委員会(CPI)開設のための署名が10日午前9時現在で40筆集まっており、休会明けのCPI開設が確実となっている。署名は午後になっても増え続けている。
8日の暴挙参加者の特定作業は進行中で、連邦議会政府リーダーのランドルフ・ロドロゲス上議は9日、反民主主義的行為に参加した議員は未就任の選出議員も含め、告発されるべきと明言した。
暴挙への参加者はブラジリアだけで1500人以上が身柄を拘束されており、子連れ女性などを除いた人々は刑務所に移送される。
なお、過激派の人々が容易に三権広場や建物に侵入した事や、デモを止めようとせず、ヤシの水を飲んでいた軍警がいた事などで、今回の暴挙を容易にした人物がいた可能性も疑われている。ルーラ大統領は厳しい対処が必要としており、当局がイバネイス連邦直轄区知事やアンデルソン・トレス元保安局長も含む責任の所在の解明、バス調達や軍施設前のキャンプなどの資金援助者特定などの作業を進めている。
フラヴィオ・ジノ法務相らは破壊された資産の賠償責任なども追求する意向だが、暴挙で傷ついた国の威信回復は容易ではない。
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8日にブラジリアで起きた反民主主義的な暴挙は国内外から批判されているが、この事件に少なからぬ影響を与えたとして動向が注目されているボルソナロ前大統領が腹部の痛みを訴え、米国フロリダ州の病院に入院している。ミシェレ夫人が9日に行ったSNSへの投稿と祈りの要請で判明したもので、夫人は18年の選挙キャンペーン中に起きた刺傷事件の影響と見ているが、病院側は真の原因を確認するための検査などを行っている。ボルソナロ氏はこの事件後、7回の入退院を繰り返している。同氏は8日、暴力や破壊行為を伴う抗議活動を批判する発言を行ったが、支持者らが起こした事件が与え得る影響が心痛となったせいかも。