襲撃事件に不気味な沈黙貫く軍部=国防相の不作為に批判高まる=諜報機関は前日に警報発し

大統領官邸の破られたガラス(Foto: Fabio Rodrigues-Pozzebom/ Agência Brasil)
大統領官邸の破られたガラス(Foto: Fabio Rodrigues-Pozzebom/ Agência Brasil)

 8日の3権中枢施設襲撃事件について、ブラジル国軍(陸、海、空)の3人の総司令官はいずれも声明を出していない。軍隊は今日まで、この事件に関して沈黙を守る唯一の国家機関となり、不信感が高まっていると10日付オ・テンポ紙などが報じている。
 ボルソナロ支持者たちは昨年の大統領選挙の決選投票を終えて以来、ルーラ大統領(PT・労働党)が勝利した結果を受け入れず、首都の陸軍本部などの前に活動拠点を置き、軍介入を要求してきた。そのため、軍部の沈黙と今後の動向に注目が集まっていた。
 8日の事件後、ブラジルの多くの機関が迅速に対応した。ルーラ大統領をはじめ、アルトゥール・リラ下院議長(PP・進歩党)、ロドリゴ・パシェコ上院議長(PSD・社会民主党)、ローザ・ウェベル連邦最高裁判所(STF)長官といった主だった政府機関の長が事件を否認し、憲法の遵守を要求する声明を発表した。
 連邦自治体の知事も会見を開き、今回の事件を否定。ミナス・ジェライス州ではボルソナロ親派のロメウ・ゼマ知事が、「表現の自由と公的機関の堕落を混同してはならない」と発言した。また、様々な市民団体や社会機関もこの事件を非難する声を上げている。
 ボルソナロ前大統領(PL・自由党)の政権下で陸軍が作った報告書では、選挙高等裁判所(TSE)が公開する情報が不足しているため、電子投票に不正があったかどうかは特定できないとし、選挙プロセスに疑問を投げかけていた。同じ論調がこの襲撃者たちからも発されていた。
 新政府では、ルーラ大統領の就任前後に陸海空3軍の総司令官が交代したが、全員、今回の事件について言及していない。
 ブラジリアでは9日に、法務省とアレシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事の判断でボルソナロ支持者のキャンプ拠点の解体が行われ、解散命令に従わなかった支持者らは逮捕された。
 ルーラ大統領が任命したジョゼ・ムシオ国防相は、ボルソナロ支持者の活動について、「表現の自由の範囲内。私の親戚も陸軍前にキャンプしている」とし、6日の閣議でも「大統領支持者らの抗議活動はコントロール下にある。時間と共に鎮静化する。対話が最善の道」とのコメントを出していた。
 9日付フォーリャ紙などによれば、諜報機関ABIN(ブラジル情報局)は7日までに関係政府機関に対し、「今週末のブラジリアへのバスのチャーター数が増加した。合計105台のバスが乗り入れ、乗客は約3900人」「主に省庁間広場で、公共の建物占拠の試みと暴力的な行動への呼びかけが行われている」との警告を発していたにも関わらず、大統領府にいた陸軍警護部隊は侵入防止に動かなかったなど、軍の不作為に注目が集まっている。

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