《記者コラム》対話を無視した暴挙に思う=民主主義はより強まった

破壊された大統領府のガラス越しに見えるブラジル国旗(Fabio Rodrigues-Pozzebom/Agência Brasil)

 8日にブラジリアで起きた連邦議会と最高裁、大統領府への侵入破壊行為は、ブラジル国内はおろか、世界中に衝撃を与えた。
 大統領選の結果に納得しないボルソナロ前大統領支持者達が何かをしでかす可能性は以前から言われていた。1日の就任式が無事に終わったことで安堵していたが、「やはり起きたか」との思いを抱いた。
 8日は三権の中枢である公共施設が全て攻撃されており、2年前の米国での議事堂襲撃事件より事態は深刻と騒がれている。対話を通じて違いを超えるという民主主義の原則を無視し、力で権力を奪おうとしたという意味では、民主主義の根幹を揺るがし、民主主義そのものに弓を引いたともいえる。
 前大統領過激支持者らは、軍施設前のキャンプや暴挙によって軍の介入実現を求めたが、実際に起きたのは、連邦直轄区への治安に関する連邦介入と、野党の知事までもが参加した大きな民主主義擁護の動きだった。
 反民主主義的な暴挙を批判し、民主主義擁護を訴えたのは、直接的な被害を受けた連邦議会や最高裁、現政権閣僚だけではない。9日には、昨年もいち早く法治国家や民主主義を擁護する声明を出したサンパウロ総合大学(USP)法学部や、少なくとも16の首都、州都でブラジリアでの暴挙を批判し、民主主義を擁護するデモが行われ、財界からも暴挙への批判が出た。
 連邦議会は休暇中にも関わらず緊急の本会議を開き、連邦直轄区の治安面に関する連邦介入を速やかに承認。上院議長らが本会議後に三権広場を徒歩で横切り、審議結果を報告したのは、前日の9日に知事や最高裁判事達と共に三権広場を横切って最高裁まで歩き、連帯と民主主義擁護を強調したルーラ大統領の姿勢に倣った象徴的な行動といえる。
 8日に類した反民主主義的な行動が繰り返される可能性はまだあり、11日には米州機構が他国でも同様の行為が起きるのを防ぐための会合を開催。ブラジリアでの治安強化も図られている。
 今回の反民主主義的な暴挙が行われる以前には最高裁判事らを名指しした口撃などが行われていた。法相が「公的機関やその働きに就く人物への口撃は言論の自由の範疇を超えている」と発言し、新政権は総弁護庁に民主主義擁護のための部門を設けた。これらの動きには、言論統制との批判も出ており、暴挙発生の要因の一つと言えそうだ。
 8日午後、暴挙発生と聞いた途端、週明けに6日開催の初回閣議の記事を掲載するつもりだったコラム子の算段は覆ったが、この事件が「雨降って地固まる」の格言通り、民主主義が一層堅固になるための試金石となる事を信じている。(み)

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