藤間流日本舞踊学校(江口桂校長)主催の「第60回新春踊り初(ぞ)めの会」が、8日午前10時半からサンパウロ市リベルダーデ区のブラジル日本文化福祉協会(文協)ビル2階貴賓室で開催された。コロナ禍の影響で3年ぶりに行われた踊り初めでは、サンパウロ市やパラナ州から集まった約40人の門下生が42演目を披露。会場には非日系人の姿もあり、満員で立ち見客も出るなど約250人の来場者で賑わった。
故・藤間芳之丞(よしのじょう)師匠の生誕89周年を記念して行われた踊り初めは、藤瀬圭子氏の司会で進行。江口校長は開会あいさつで、3年ぶりの開催となった踊り初めでは、歌舞伎のような特徴の舞も披露されることにも触れた。引き続き、司会の藤瀬氏が「皆さん、コロナ禍で苦労されたと思いますが、今日は一日、元気で楽しんでいただければ」と述べ、開幕を盛り上げた。
来賓の頃末アンドレ文協副会長、林まどか同理事の祝辞の後、舞台上では『祝賀の舞 長唄、雛鶴(ひなづる)・三番叟(さんばそう)』を皮切りに個人舞踊や団体舞踊が披露。艶や
かな着物姿で踊る門下生たちに、観客からは惜しみない拍手が送られた。特に、8歳の男の子2人による『白虎隊』、4歳の女の子による『十五夜お月さん』の演舞には、ひときわ大きな歓声が響いていた。
後半は男性2人の『だんじり』、男女2人の『清元(きよもと)、三社祭(さんじゃまつり)』、名取の芳琴(よしこと)さんによる『関東春雨傘(かんとうはるさめがさ)』などベテランの舞が観客を魅了。フィナーレは、若手とベテランの男女6人による『川の流れのように』で締めくくられた。
『こころ酒』を1人で踊った94歳の藤川よし子さん(岡山県出身)は、1979年から踊りを始め、藤間流で踊るのは5年ほど前からだという。自身の踊りについて聞くと「恥かしい限りです」と苦笑していた。
名取の芳琴さんは3年ぶりの踊り初め開催について、「(稽古は)短い期間でしたが、皆さん元気に踊っていただきました。特に『清元、三社祭』では動きの激しい特徴のある踊りを
皆様に見ていただき、踊った2人も難しかったと思いますが、勉強になったと思います」と話していた。
会場最前列の座席で門下生の踊りを見守っていた最古参の名取である芳誠(よしせい)さんは「パンデミックであまり稽古ができない中で、みんな本当によくやってくれました」と穏やかな笑顔を見せていた。