記者コラム=「コロニアの味」に涙

「コロニアの味」を感じさせるラーメン

 コラム子は日本生まれの日系3世で、12歳までを山梨県で過ごし、ブラジルに来てからはサンパウロ州バウルー市で日系社会と関りを持たずに育った。そのため「コロニアの味」を知らない。先輩記者にぜひ一度味わってみたいと尋ねると、ガルボン・ブエノ街のレストラン佐藤を紹介された。
 行ってみると、内装は白いタイルで覆われ、飾りつけもあまりない簡素な造りだ。「初期移民の素朴さが表れているのか」などとひとり感心しながら、テーブルに座りメニューを見た。目を惹いたのはラーメン。日ごろ食べなれているラーメンなら比較も容易だろうと思い、注文した。
 ちくわと玉子焼きがトッピングされたラーメンが運ばれてきた。今どきの日本ではあまり見られない組み合わせだと感心した。一口すすってみると醤油味だが、甘さが強い。「九州人は甘い醤油を好むという。きっと九州からの移民が甘い醤油を使ったラーメンを食べたいと願い、このラーメンが生まれたのだろう」などと想像した。
 自分の中では、九州から来た移民が試行錯誤を重ねて、現地にあるものだけでこのラーメンにたどり着いたのだろうと思えた。現地の食材で初めてラーメンを作った先人は、郷愁に駆られて泣き崩れたかもしれない。
 コラム子もブラジルに移住して10年が経った頃、突然どうしても日本の味を食べたいと感じ「なんちゃって日本料理」を自作したことがある。記憶に残っている味との違いはあったが、懐かしさのあまり目が潤んだことを思い出した。
 そしてこのラーメンを食べながら、今ブラジルで日本食が簡単に食べられることは、これまでの先人の努力の賜物だと改めて気付いた。
 日本と遜色ない和食を食べることが出来る時代のブラジルに育ったコラム子。レストラン佐藤のラーメンが九州移民の郷愁の果てに生まれた逸品かどうかは定かではないが、移民の歴史に思いを馳せさせる「コロニアの味」であったことは確かだ。(ア)

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