ルーラ大統領(労働者党・PT)は23日、アルゼンチンを訪れ、フェルナンデス大統領と会談を行った。両国は会談を通じ、南米での共通通貨を作ることや、社会経済開発銀行(BNDES)の再活性化、ベネズエラやキューバの軍の脱政治化など四つの点で合意に達した。23、24日付現地紙、サイトが報じている。
ルーラ大統領のアルゼンチン訪問は、ボルソナロ政権時代に悪化した南米諸国との関係を修復する戦略の第一弾として行われた。ボルソナロ前大統領は企業家出身のマクリ同国前大統領と懇意で、アルゼンチン国内で外交上禁止されている大統領選での支持を公言。マクリ氏が敗れた後はフェルナンデス大統領を度々批判していた。
一方、ルーラ氏はネストル・キルチネル大統領時代以来、フェルナンデス氏の正義党とは懇意の仲だ。フェルナンデス氏は2019年の大統領選当選直後、当時まだクリチーバで受刑中だったルーラ氏を訪問している。ルーラ氏は今回の再会でも、「あの恩は一生忘れない」と感謝の意を示している。
ルーラ氏は首脳会談でも、ボルソナロ氏のフェルナンデス氏に対する言動や、ボルソナロ政権でのコロナ対策が甘く、隣国にも影響が及んだことを詫びたり、サッカーW杯で優勝したアルゼンチン代表を「生まれて初めて応援したよ」とたたえたりしており、会談は終始和やかな雰囲気で行われた。
この会談で両大統領は四つの点に関して合意書を交わした。最初は南米共同通貨の作成だ。これはハダジ財相がかねてから希望していたものだ。ルーラ大統領は「より現代的な次元に突入したい。南米同士の国での商業流通で常にドルに縛られる必要はない。地域の通貨の可能性を探りたい」と語っている。
二つ目は、BNDESによる国外投資を再開し、諸外国の建設事業の再活性化を図る案だ。BNDESによる外国へのインフラ投資は以前のPT政権時代は活発に行われていたが、独裁国家のキューバやベネズエラへの事業が含まれていたことや大型汚職が疑われることで、保守派の風当たりが強かった。
三つ目は、ベネズエラとキューバとの関係だ。ルーラ氏はボルソナロ政権や他の諸国がフアン・グアイド国民議会議長を暫定大統領と公認したことを「民主主義を無視したやり方だ」と批判。キューバに関しても、「経済制裁や国交断絶ではなく、対話が必要」と、諸外国の対応に疑問を投げかけた。
これらのことは、24日にアルゼンチンで行われたラテン・アメリカ及びカリブ諸国共同体(Celac)首脳会談に合わせたものだった。ボルソナロ政権は2020年に同共同体を脱退したが、この日はルーラ大統領が参加。復帰の意向を示している。
四つ目は「軍隊の脱政治化」だ。これはボルソナロ政権時代に軍が政権に入り込み、政治的判断を行うようになったことが8日の三権中枢施設襲撃事件を招いたと判断してのことだ。両大統領とも、「ファシズムによる威嚇は赦されない」との意向を強く示した。