【既報関連】4年間で5歳未満児だけで少なくとも570人が死亡し、非常事態宣言も出たヤノマミ族。その居住地はブラジル北部のロライマ州とアマゾナス州に広がる。18~24日付現地紙やサイトによると、同族の窮状の背景には、前政権が先住民居住地での鉱物採掘を認めた事や環境監視が疎かになった事で金の不法採掘が急拡大した事がある。
金の不法採掘拡大で人口3万のヤノマミ族居住地に約2万人の金鉱夫が入った事は、近代病への耐性がない先住民が病に倒れる事態や、金鉱夫との抗争、金鉱夫らによる犯罪行為の増加を招いた。
また、金の精製に使う水銀が土壌や河川を汚染し、魚や作物を介した水銀中毒も発生。水銀の害を恐れて魚や作物を食べられなくなれば、食料不足や栄養失調も悪化する。
先住民保護区制定にも関与した元法相で連邦検察官のエウジェニオ・アラゴン氏は21日、4年間で最低570人の子供が医療支援さえ受けられずに死亡した事などを理由に、ボルソナロ前大統領は先住民の大量虐殺の責任を問われるべきと発言。フラヴィオ・ジノ法相も現地視察後、連警に大量逆殺と環境犯罪に関する捜査開始を命令した。
22日にはジルマル・メンデス最高裁判事も責任者の早期解明と処罰の必要を説いた。連警の捜査は23日に始まっており、連邦検察庁も前政権の怠慢がこのような状態を許したとの見解を表明している。
他方、保健省は22日、統一医療保健システム(SUS)版国家治安部隊への参加希望者の登録用リンクを開設し、ヤノマミ族の居住地や先住民向け医療施設で働く医療従事者を募集。アマゾニア連邦大学医学部も同様の活動を始めており、23日の内に医療部隊第1陣12人が派遣された。また、かつての労働者党(PT)政権が導入した医師派遣制度マイス・メディコスでも国内外で免許を獲得した医師の志望者を一斉募集し、医師派遣を加速化する意向だ。
23日には先住民向け医療での不手際や怠慢、医薬品購入や配布での不正、データ改ざん疑惑などを理由に、11先住民特別行政区(Dsei)の担当者を解任。24日には国立インジオ保護財団(Funai)関係者43人も解任された。新政権は先住民政策上の体制一新や効率化も図る意向だ。
また、空軍が21~22日に4トン弱の食料品セットを空輸した他、スラム統一センター(Cufa)やアソン・ダ・シダダニアなどの非政府団体(NGO)がヤノマミ族向けの食糧や寄付を募る動きも出ている。
ルーラ大統領が選挙中から訴えていた金の不法採掘撲滅への動きも、今回の報道で加速化する可能性がある。