サンパウロ市南部サコマン区では昨年10月とこの1月に、日系高齢女性二人が立て続けに強盗殺人の被害に遭う悲劇が起きた。警察は「東洋人宅の強盗のエキスパート」の関与を疑っている。一戸建てでの一人暮らしを避け、外国旅行のために自宅に現金を準備していること等を外部の人にもらしたりしないなど防犯注意が必要だ。
■オカムラ・ヤエコさん
1日付UOLサイト記事によれば、先月30日深夜、サンパウロ市南部サコマン区に住むオカムラ・ヤエコさん(84歳、二世)宅に6人組の強盗が侵入し、彼女をネクタイで縛りあげて拷問した末に死亡させたという。家電製品等が盗まれた。
オカムラさんはパラナ州生まれ。2年前、同じ通りに住む娘の近所に住むため夫と共に引っ越し、昨年夫に先立たれて一人で暮らしになっていた。「一人でいるのが怖い」と毎日親戚に来てもらい一緒に寝ていたが、事件当日は一人だったという。同じ通りに住むペドロ・バルディさんは、「被害者は、物静かで礼儀正しく、オルガンを弾いていた」と語る。
同記事によれば、近所の住人は「彼女は一人でいる事を恐れていた。僕たちが家のチャイムを鳴らしても、彼女は恐れた目でドアを開いていた。強盗らは機会を伺っていたんだ。いつもは街路警備員がいるが、日曜日は休みだった。とても怒りを感じる」と語った。
サンパウロ州公安局(SSP―SP)は強盗殺人事件として捜査を進めており、犯行に関与したとみられる成人2人と青年2人の4人が特定された。ファビオ・マーティン捜査官は、3人が窃盗と麻薬取引で逮捕された前科を持っているという。
遺体はパラナで埋葬される予定。
■タマミ・イクノさん
フォーリャ紙22年10月25日付によれば、昨年10月22日深夜同じくサコマン区で、元看護師のタマミ・イクノさん(81歳)が自宅に居た所、強盗3人が侵入し、その1人に口と鼻を抑えられ窒息死する事件が起きた。犯行には4人が関与した。警察が捜査を続けているが逮捕者はいない。
市警によるとは、タマミさんの家に泊まっていた62歳の男性看護師がトイレに行こうとした所、犯人に捕らえられ縛られた後に、2階のタマミさんの部屋に連れて行かれたと供述している。
タマミさんが犯人等を見かけた時に悲鳴を上げたため、犯人は彼女の口と鼻をふさいだ。男性看護師は、動揺していたタマミさんを落ち着かせると約束し、犯人に彼女の口と鼻をふさぐのをやめるよう交渉した。しかし、タマミさんは動揺しており、また悲鳴を上げたため、犯人は再び手で口と鼻をふさぎ窒息死させてしまった。
タマミさんの娘は鍵のかかった別の部屋で寝ていた。「そのため、5時半ごろ犯人らは窓から部屋に侵入した」と市警は語っている。さらに犯人らはタマミさんと娘の名前を知っており、彼女らが外国旅行するために用意していたドル、ユーロ、ポンドなどの外貨を家に置いていたことも知っていた。
犯人等は外貨を奪ったあと、タマミさんの娘を拘束して逃走した。拘束を解いたタマミさんの娘が母親の部屋に駆け込むと、男性看護師がタマミさんに心肺蘇生を施した。だが、駆け付けた救急隊により死亡が確認された。
3人組は「東洋人宅の強盗のエキスパート」を自称し、被害者たちの情報を事細かに把握しているとして警察の注意を引いている。
タマミさんは小児科・保育、産業看護、公衆衛生などの専門家で、教育者としても活躍していた。「タマミさんは重要な存在。81歳で引退した後も看護師としての活動に貢献した」とインスタグラム上にて投稿され、数々の嘆きのコメントが寄せられている。
遺体は23日に荼毘に付され、翌日24日にサンパウロ市コンゴーニャス区の墓地に埋葬された。