7日午前、中銀のロベルト・カンポス・ネット総裁が「中銀の独立性が自助努力の効率を高める」と発言。これを聞いたルーラ大統領(労働者党・PT)が不快感を示す事態となった。大統領による中銀批判はここ数日間続いている。7、8日付現地紙、サイトが報じている。
カンポス・ネット総裁の発言は7日の午前中、米国マイアミで行われた講演で飛び出したものだ。同総裁はここで、「中銀が独立性を保っていると通貨政策が政治上のサイクル(選挙や政権交代)に左右されずに済む。政治家は異なった視点、異なった関心を持っているからだ」し、「中央銀行の独立性が高いほど、通貨政策は効果的になり、通貨政策の変更に伴う不必要な出費を抑えることができる」と語った。
ルーラ大統領は同日、この発言に対し、「混乱を起こしたい訳ではない」と前置きした上で、「カンポス・ネット総裁にはこの発言の真意を連邦議会で説明してもらいたい」と語った。
ルーラ氏は今回のマイアミでの発言が行われる前からカンポス・ネット総裁を批判していた。その最大の理由は、経済基本金利(Selic)が13・75%で高止まりしていることだ。Selicがここまで上がったのはインフレ対策のためだが、この高金利では経済活動が抑制され、国内総生産(GDP)が伸びにくくなる。
大統領は6日に開催された社会経済開発銀行(BNDES)の総裁就任式で、「わが国には高金利の文化がある」「経済成長の必要性とは相容れない」と言い、高金利を「恥」とまで呼んだ。
ルーラ氏は7日に大統領府で行われた大手マスコミ相手の会見でも同じ論を繰り返し、カンポス・ネット総裁を「あのシダダン(市民)」と呼び、「彼は(インフレを抑制できず、経済成長を難しくしていることで生じる)国の経済上の責任を負わなければならない」と強く批判した。
だが、現在は前ルーラ政権(2003〜10年)のように中銀の人事に介入することができない。中銀の独立性は2021年にボルソナロ前大統領が支持し、連邦議会で承認されたものだからだ。
国際市場も政府による金融政策介入を嫌う傾向にあり、ルーラ氏の今回の一連の発言は否定的にとらえられている。
一方、フェルナンド・ハダジ財相(PT)は7日、高まる大統領の不満や中銀との緊張関係を和らげようとする発言を行った。同財相も6日は金利高止まりを批判していたが、7日に発表された1月31日~今月1日の中銀通貨政策委員会(Copom)の議事録に同相が1月に提唱した財政政策を肯定的に評価した記載があることなどを見て、「会合後の会見で語られた内容よりかなり良い」と評価。「次に取るべきステップに関して、より友好的な内容だ」とも語っている。
中銀はCopomの議事録で、ハダジ財相の財政政策はまだ議会を通過していない上、実際に適用されるまでには課題があるとしつつ、うまく適用すればインフレの沈静化も期待できる評価している。インフレが抑制されればSelicの引き下げも可能となる。