日本人のプロ打楽器奏者で、これまで何度もブラジルのカーニバルに「バテリア」として出場しているIsao Catoさん(40歳、東京都出身)が、1月12日から3年ぶりに来伯している。今週からに開催されるサンパウロ・カーニバルへの出場と、エスコーラ・デ・サンバ音楽の調査が訪問の主な目的だ。
遺伝性の視野狭窄(しやきょうさく)障害を持ちながらも、日本でプロドラマーとして活動しているCatoさん。自身の演奏・録音活動をはじめ、他者への音楽指導のほか、昨年までは愛知県のTAMAドラム(星野楽器)と10年にわたってモニター契約を結んでいた。今年からはヤマハ楽器に移籍し、ドラム等の使いやすさや自身で感じたことなども紹介している。
また、昨年4月からは沖縄県立芸術大学音楽芸術研究科の修士課程で民族音楽学を専攻。日本国内でサンバについての系統だった日本語の資料や学術研究がないことから、自身で修士論文をまとめる考えだ。今回は、そのための調査にも重点を置いており、着伯翌日からサンボドロモで行われているカーニバルのエンサイオ・テクニコ(練習)に足を運び、調査を行っている。
さらに、今回の滞在中にリオ市の国立図書館やブラジル国内の一般書籍店、古本屋などを巡り、サンバに関する資料も集めるという。そのほか、エスコーラ・デ・サンバについて博士論文を書いたというリオ市文化局長にもコンタクトを取り、話を聞く予定だ。
2月17、18日に予定されているサンパウロのカーニバルには、2部の「モーホ・ダ・カーザ・ヴェルデ」でバテリアとして出場するとともに、1部の「ソシエダーデ・ローザス・デ・オウロ」ではあえて演奏活動は行わず、身体障害者グループに交じっての行進を体感するという。
「サンバは学術的に判っているだけでも30種類はあると言われています。(カーニバルの)エンサイオ・テクニコで撮影した動画を持ち帰って譜面にしたり、ブラジルにあるサンバ等の資料に基づいて日本語で文字化し、きちんとした音楽文化を日本で伝えることができれば」とブラジルでの調査に意気込みを表すCatoさん。「以前は自分のやりたいことをやっていましたが、年々、目も見えにくくなり体力的にも衰えていく中で、今は社会的意義を感じるようになりました」と自身の活動を通じた社会貢献を目指している。
2013年に初来伯してから今年で10年が経つCatoさんは、今後の目標について「できれば博士課程に進学し、より学術的にしっかりしたものを残していければ」と意欲を見せている。