17、18日にサンパウロ市アニェンビーのサンボドロモ会場で行われたサンバカーニバルで、日本の黒人侍「弥助」をテーマにした名門サンバチーム「モシダーデ・アレグレ」が9年ぶりのスペシャル・グループ優勝を果たした。優勝は11回目。16世紀にキリスト教神父が日本に連れて行ったアフリカ人奴隷が日本で侍に取り立てられて「弥助」となった歴史的逸話をもとに、多彩なアフリカ文化表現も融合した異色のパレードとなった。21日付ブラジルカルナヴァレスコ紙(1)などが報じている。
モシダーデ・アレグレは、19日早朝、5番目に登場し、1時間3分に及ぶパレードは、16のアーラ(群舞隊)と四つの山車によって「弥助の先祖の歴史」「弥助を知った日本」「十人力の剛力」「黒人の若者の心に生きる弥助の精神」の4ブロックに分けて表現された。
パレード評価は七つの項目で審査する。モシダーデ・アレグレは華麗さ、躍動感、調和性の3項目で満点を取り、優勝した。
パレードで先陣を切ったのは、刀を持った「ブラックサムライ」達。サンバ特有のリズミカルなテンポで小刻みにステップを踏みながら刀を振るダンスを披露した。
続いて弥助の生まれたモザンビークのバントゥー系民族の神話をモチーフにしたアーラが登場。チーム旗を持って回転しながら踊る女性「ポルタ・バンデイラ」とその相手役「メストレ・サーラ」が現れた。両者は正義の神「ンジャジ」と水と知恵の女神である「ンズズ」をモデルにし、雨に関わらず終始、リズムを崩すことなく、見事な踊りを披露した。
三度笠を被った打楽器隊が登場し、戦国大名の織田信長が黒人の弥助が肌に墨を塗っていると思い、体を洗わせたという逸話から、巨大な弥助の顔に水をかける演出の山車が現れた。この演出の為に計5千リットルの水が使われたという。
兜をかぶった大きな弥助の顔が前面に取り付けられた山車も登場。ステージ上部には龍が備え付けられ、弥助の勇敢さを強調した。
最後には短冊で飾られた山車の上に、折り鶴で遊ぶ黒人の少年が現れ、偏見や差別と戦う現代社会の黒人青年たちを勇気づけるメッセージが表現された。
弥助をテーマにしたきっかけは、カルナヴァレスコ(総合演出)のジョルジ・シルベイラ氏が2年前にアシスタントから弥助の存在を知らされ、カーニバルに使えるネタだと思い、調べ始めたところにある。西洋ではあまり知られていないが東洋では有名なことが分かり、弥助の歴史をパレードで表現するために弥助の生涯を調べるのに夢中になったと報じられている。