オキナワサントス=第4回上映会に150人来場=強制退去当事者上江洲さん家族も参加

上映会に詰めかけた人々

 サントス強制退去事件を描いたドキュメンタリー映画『オキナワサントス』(90分、松林要樹監督)の第4回巡回上映会が、12日午後3時からサンパウロ市ビラ・エスパニョーラ区のブラジル沖縄県人会サンタマリア支部会館で開催され、各支部会員など約150人が来場した。上映会は、同県人会サンタマリア支部(照屋マルコス支部長)とカザ・ヴェルデ支部(嘉陽ルイス支部長)の共同で実施された。
 開会式は、沖縄県人会本部元会長の島袋栄喜氏の司会で進行。先亡者への黙とうに続き、地元サンタマリア支部長の経験もある高良律正沖縄県人会本部会長があいさつした。
 上映実行委員長の上原ミルトン定雄氏は、昨年11月13日に予定されていた上映会がコロナ禍により、この日に延期されたことを説明。1943年7月8日に起きたサントス事件で、当時のブラジル政府がサントス沿岸在住の日本移民約6500人とドイツ系移民を合わせた総勢1万人に対して24時間以内の強制退去命令を発令したことに改めて触れた。その上で、「映画を通して証言者たちの声に耳を傾け、埋もれたサントス事件の真実を共に考えていきましょう」と呼びかけた。
 沖縄県人移民研究塾の宮城あきら代表は、昨年10月にサンパウロ市カショエイラ地域の協和農村文化協会会館で行われた第3回上映会で、野原健寿(けんじゅ)初代会長をはじめとする歴代会長4人も退去命令を受けた当事者だったことに言及。サントス事件が沖縄県人移民史上、最大の歴史的事件であることを強調し、「後世のためにも(ブラジル)連邦政府が二度と同じ過ちを繰り返さぬことを願って『賠償を伴わない謝罪』を求めることは、私たちの責務ではないでしょうか」と問いかけた。
 引き続き、サンタマリア支部の照屋支部長とカザ・ヴェルデ支部の嘉陽支部長のあいさつの後、上映開始となった。

上江洲マウリシオさん(右から2人目)家族

 近隣のイミリン地区から家族4人で来場した上江洲(うえず)マウリシオさん(65歳、2世)は、父親(1983年に69歳で死去)が強制退去の当事者だったことを、父親が晩年になってから聞かされた。当時、自動車の整備工だった父親は強制退去でサンパウロ州ルセーリアに行くことになり、近郊のアダマンチーナでの生活を経て十数年後にマウリシオさんら家族を連れてサンパウロ市に転住。その直後にサントスの様子を見に行った際、自動車整備工場はすでに跡形も無くなっていたそうだ。「(父親は)あまり細かいことは話さなかったが、ある日の食事時に(サントス強制退去事件のことを)突然聞かされた」と振り返るマウリシオさんは、『オキナワサントス』を観て「とても良かった」と率直な感想を語っていた。
 同伴した夫人の和美さん(62歳、2世)は、義父の話を伝え聞いていたこともあり、今回の上映会を楽しみにしていたという。和美さんの母親の平尾要子(ようこ)さん(87歳、長野県出身)は「悲しい映画だったが、(強制退去当事者の)皆さんはよく頑張ったと思います」と話していた。
 上映後の質疑応答後は、舞台上で沖縄県人子弟の神谷ラファエルさんが三線(さんしん)を演奏。「伊佐浜(いさはま)移民」の澤岻安信(たくし・あんしん)さん(90歳)が作詞した『ふるさとぅぬ想い』をはじめ、『屋嘉節』『島人ぬ宝』を披露し、会場を盛り上げた。カザ・ヴェルデ地区から子供と孫に連れられ車椅子で来場した澤岻さんは、「ブラジルに来て、30数年ぶりに故郷に戻った時の想いを神谷さんに歌ってもらい嬉しい」と感無量の様子だった。

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