連載小説=自分史「たんぽぽ」=黒木 慧=第137話

・一月二十二日(火) 昨年の暮の十二月二十六日から、今日の日の一月二十二日まで、私達の長女今西瑠璃子とその夫今西ミゲールがコチア青年三世訪日研修団に加わって、初めて訪日した。最初の十一日間は団体行動はせずに、各人それぞれ自分達の祖先のふるさとで正月を過ごすことになっていて、瑠璃子達も神奈川県川崎市に在住する末娘の絵里子の案内で、父のふるさと日向(宮崎)と母のふるさと菊池(熊本)を訪ねて、伯父伯母やいとこ達と初めて出会い、祖先の墓参りを済ませ、長崎など観光して一月九日から三世研修団体の行動に移った。団体行動は広島から始って、神戸・大阪・京都・奈良と研修して、東京ではオリンピック・センターに八日間宿泊して、その間千葉県君津の日本製鉄工場を見学、スカイツリーにも昇り、メインの皇居を訪問して皇太子殿下に謁見を拝し、お話も出来たと喜んでいた。これで私達の子供四人皆、ふるさと日本の祖先の墓参りを済ませることが出来て、私達老夫婦としてほんとうに喜んでいる。
・二月十六日(土) 瑠璃子とミゲールの次女マリ・リースとポルトガル系のロドリゴ君のカザメント(結婚式)がイタぺセリカのシャーカラで行われた。飾り付けも式の流れも食事もすべて豪華で、高級車一台分の金を使ったとか。私どもの孫も中々やるなあ、と感心した。それともう一つ、私達が一番気になっていた異人種との結婚と言うことである。私達にはまだ余りなじみのない出来事で最初は少々とまどったけど、前向きに思考を変えて、今からブラジルで生きて行く子供達の世代は、清濁合せ呑むアマゾンの大河の様に、又、あらゆる人種を差別せず、生活の場を提供する大国ブラジルは平和な家庭を築いて行ける理想郷ではないか。私達日本人は日本人としての誇りを持っているのだ。これで良い。これでいいのだ。
・四月十三日(土) ニッケイ新聞の「ぷらっさ」欄に美佐子はいつも投書して常連仲間である。私も時々投書することがある。この数日前に「マレットゴルフ礼賛」を投書した。又、コチア青年会報にも「コチア青年は良き時代に生きて来た」を投書した。
・五月二十六日(日) 第三回ユタテ・ゴールデン・ショーで成人は三回目。今年は姉の茜も出演して好評であった。松岡先生が、このブラジルの日系社会でも日本の演劇や歌謡のプロ化をめざして開催しているショーである。

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