ルーラ大統領(労働者党・PT)は6日、スキャンダルが相次いでいたジュセリーノ・フィーリョ通信相(ウニオン)と直接会談を行い、留任させることを決めた。その背景には、ウニオンの連邦議会での支持の問題があった。6日付フォーリャ紙サイト(1)などが報じている。
2月27日付エスタード紙(2)によれば、ジュセリーノ氏は下議だった2021年に、今日では違法となっている下院の別名「秘密予算」と呼ばれた報告官手当から500万レアルを使って、マラニョン州ヴィトール・フレイレにある自身の農園につながる通りをアスファルト舗装させる個人使用を行った疑惑が通信相就任早々に発覚。さらに、実妹でもあるヴィトール・フレイレ市長を介して、謎の企業と疑惑の契約を交わしていたことも報じられた。
通信相就任後も、1月にサンパウロ州内陸部で行われた競走馬入札という私用に公用行事にしか使えない空軍機を使って参加し、しかも日当までもらっていた不祥事が発覚。2月27日付エスタード紙(3)にはロライマ州の先住民ヤノマミ族に携帯電話のチップを1千個送ったところ通信ができないトラブルも報じられていた。
こうしたことから、グレイシ・ホフマン党首を筆頭にジュセリーノ氏の解任を求める声がPT内部から強く起っていた。
ルーラ大統領はこの日の午後、本人との話し合いを行った。ルーラ氏が事前に「正当な理由がなければ、大臣を辞してもらう」と予告していたため緊迫感を持って迎えられたが、結局は職務を継続することになった。
この背景には、連邦議会内の力関係があったと報じられている。同議会で与党議員は過半数さえ超えない勢力しかない。法案を通すには、下院で59人、上院で9人を抱えるウニオンの存在は無視できない。
ウニオンは元々が保守政党で、前身が民主党(DEM)とボルソナロ前大統領の所属した社会自由党(PSL)であるため、反PT派も少なくない。だがボルソナロ氏と袂を分かったルシアノ・ビバール氏がルーラ氏の支持と協力を約束したために大臣3人を擁するという与党的な存在になった。
だから、この話し合いの前には「もし彼を解任すると、党が一気に野党へと傾くことになる」とウニオンの上層部がルーラ政権の閣僚らに伝えていた。
同党は4日にも、ジュセリーノ氏解任を求める発言をしたPTのグレイシ党首に対し、連名で抗議する声明を出していた。
ジュセリーノ氏は会談後、「前向きな話ができた」として、辞職を求めなかったルーラ大統領への感謝を寄せた。大統領府の公的倫理委員会の審議を受けるだけですみそうだ。その代わりにルーラ氏は、ウニオン内の票まとめの役割を強く求めたと報じられている。