ルーラ大統領(労働者党・PT)が次期最高裁判事として、ラヴァ・ジャット作戦(LJ)に関する裁判で自身の担当弁護士を務めたクリスチアーノ・ザニン氏を指名する可能性が高まっていることに関し、懸念を示す声が目立ってきている。14日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
ザニン氏は、この5月に定年退職となるリカルド・レヴァンドウスキー判事の後任判事として指名されることが有力視されている。
同氏はルーラ氏のLJの裁判の担当弁護士を長く務めてきた。その中には、結果的に2018〜19年に580日に及ぶパラナ州連邦警察での服役につながったサンパウロ州グアルジャーの高級三層住宅を介した収賄などの嫌疑での裁判や、釈放後に流れたヴァザ・ジャット報道に基づいて起こした、LJ担当だったセルジオ・モロ連邦地裁判事(当時)の裁判の偏りを問う訴訟も含まれている。
ルーラ氏としては、自身の政治生命を復活させたこともあり、ザニン氏に対する評価は高い。今月2日に行われたバデイランテス局のインタビューでも、ザニン氏を「私の友人」と称し、「もし私が彼を指名したら、皆が妥当な選出だと思う(理解する)はずだ」と発言している。ただ、ルーラ氏の発言は大統領選キャンペーン中の「最高裁に友人はいらない」との発言と矛盾するとして、批判が少なくなかった。
加えて、司法関係者からの批判も相次いでいる。ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)のルーベン・グレゼル法学教授は、「権力者が司法に自身に近い人物を入れることは違憲行為だ」との判断を下したほか、ペルナンブッコ大学のフラヴィア・サンチアゴ・リマ教授は「裁判所は非人格性の原則(Princípio da impessoalidade)に基づき中立でなければならない」、FGVのオスカー・ヴィリェーナ教授も「最高裁は民主主義の見本でなくてはならない」と発言している。
また、現在は上議となっているセルジオ・モロ氏も、「非人格性とやらはどこにいった」とルーラ氏を皮肉っている。同氏がLJでのルーラ氏の裁判で「個人の考えに偏った判断をした」と最高裁に判断されたことは、ルーラ氏の被選挙権回復にもつながっていた。
また、ザニン氏が仮に最高裁判事になった場合、自身が弁護士として関わったLJ関連案件などは担当できないという問題もある。
さらに、ルーラ氏が指名しても、上院の口頭諮問(サバチーナ)でルーラ氏との関係性を強く問われることも考えられる。
ただし、ジウマール・メンデス、カルメン・ルシアの最高裁両判事は最近、ザニン氏を判事候補として容認するともとれる発言を行っている。
なお、レヴァンドウスキー判事としては、最高裁や選挙高裁で次官を務めたマノエル・カルロス・ダ・アルメイダ氏を後任に希望していると、昨年中から報じられている。
また、国立会計検査院(TCU)判事でルーラ政権とも良好な関係を築いているブルーノ・ダンタス氏を有力視する報道も一部で出ている。