最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は15日、1月8日の三権中枢施設襲撃事件を黙認した嫌疑で90日間の停職処分を受けたイバネイス・ロシャ連邦直轄区(DF)知事(民主運動・MDB)の処分を解いた。イバネイス氏は既に知事に復職した。15日付G1サイト(1)などが報じている。
イバネイス氏の停職処分は事件が起きたその夜に行われた。この事件では、数千人規模のボルソナロ前大統領支持者たちの襲撃を見逃した連邦直轄区軍警や、同直轄区保安局長に就任したが、襲撃直前に休暇を前倒しして米国に渡った前法相のアンデルソン・トーレス氏の責任が問われている。イバネイス氏も治安上の不作為により、「襲撃を黙認したのではないか」との嫌疑がかけられ、停職処分を受けた。イバネイス氏はボルソナロ氏支持派の政治家として知られていた。
停職処分直後には、連邦直轄区の議会でイバネイス氏の罷免を求める嘆願書が3通出され、所属のMDB党内でも一部党員の間で、イバネイス氏の追放を求める声が強まった。
だが、捜査妨害や証拠隠滅を図った形跡はなく、不作為を裏付けるような決定的な証拠が見つからなかったため、モラエス判事は連邦検察庁の要請通り、停職期限の90日を待たず、66日目にしてイバネイス氏の「即時復職」を認めた。同氏は15日に復職を求める訴えを行っていた。
この判断に関してはフラヴィオ・ジノ法相(ブラジル社会党・PSB)も、「モラエス判事は個々のケースにかなり慎重に対処している」と褒め、イバネイス氏に関して襲撃を黙認した証拠がないことを認めている。
ただし、モラエス判事は、連邦警察による治安上の不作為の嫌疑に関する捜査は続いており、必要があると判断される場合は再停職もありえるとの判断も付け加えている。
フォーリャ紙の報道によると、イバネイス氏は元党首であるロメロ・ジュカ元上議の助けを借りる形でMDBからの追放を免れていた。また、連邦直轄区議会の襲撃事件に関する議会調査委員会(CPI)でも、委員7人中5人がMDB所属と、罷免が起こりにくい状況となっていた。
イバネイス氏はモラエス判事の命令後、自身の復職を願っていた支持者やモラエス判事の判断に対する感謝を書面で述べている。
他方、連邦直轄区議会では襲撃事件に関するCPIが既に始まっている。16日には襲撃現場での不作為の嫌疑がかけられている、ジョルジェ・エドゥアルド・ナイメ、マルセロ・カジミロ・ヴァスコンセロス・ロドリゲス両軍警大佐に対する召喚が行われている。
23日には1月から勾留が続いているアンデルソン・トーレス氏も召喚される見込みだが、トーレス氏は先週、CPIへの出席は任意とすることを認める判決を受けている。
なお、モラエス判事は15日に同CPIの調査内容の入手を禁ずることを決めている。