老人福祉施設「憩の園」を運営する救済会(本田イズム会長)は12日午前、サンパウロ市のブラジル日本文化福祉協会第13会議室で第71回定期総会を開催し、約50人が出席した。コロナ禍中は、自助努力であるイベント収入がゼロだったが、昨年から徐々に再開して増収となり、JICAなどの支援によって何とか黒字で終えることになったと報告された。
最初に本田会長の呼びかけにより、功労者の上島マリオ氏、岩水マリオ氏、吉安園子元会長を始め、昨年亡くなった入園者らに1分間の黙祷を捧げた。岩本卓(たかし)さんを議長に総会は進められ、来賓として在サンパウロ総領事館の山内隆弘領事部長が「パンデミックの間、さぞや入園者の皆さんの対応には気を使われたのでは。理事会や職員の皆さんのされた苦労に感謝します」と述べた。
昨年の活動報告では本田会長が、パンデミック前は70人程度だった入園者が、現在では42人に減っているが、これは収入減に応じた対処で、コロナ病死者はおらず、皆自然死や退去によるものと説明。困った人を受け入れてきた憩の園では、入園者が多いほど赤字が膨らむ傾向が強い。
昨年入園の問い合わせは344件あり、入居したのは8人。自然死6人、退去3人だった。現在も入園待ちの列が129人もいる。
本田会長は「まだコロナが完全に収まっているわけではないが、気を付けながら以前の状態に戻していきたい」との方針を明らかにした。入居者や職員、ボランティアの名前を挙げながら、七夕祭りやひな祭り、紅白歌合戦などの1年間の行事を写真でたどり、皆の協力に感謝した。
昨年の会計報告が関秀貴会計理事から行われ、収入762万3471レアル、支出702万9251レ、差し引き59万4220レだった。21年と22年にはJICA改修支援金約270万レが入り、通常より規模が膨らんだ。
寄付金も一昨年の273万レから昨年は349万レに増額した。吉岡黎明元会長は「赤字で終わりそうな危機に陥ると、必ず大型の寄付者が現れる。天国からドナ・マルガリーダ渡辺が見守っていてくれる」とコメント。イベント収入も104万レから161万レに60%も増え、関氏は「ボランティアの協力の賜物」と感謝した。
今年の行事予定で本田会長は「運営の質の向上、更に多くのイベント収入」などの目標を掲げた。今年の予算は収入576万9073レ、支出570万6937レ、残高6万2137レと発表され、全ての項目が出席者によって承認された。
最後に本田会長はJICA支援によって実現した全室トイレ設置、温かいまま食事を運搬するカート、薬局などの写真を見せながら、サービスの向上を報告。その場にいた職員を前に呼んで紹介した。
□街角ちょっと見□物品寄付や納税証明で協力を
憩の園の収入の大きな部分を占めているのが、物品寄付とノッタ・フィスカル・パウリスタだ。
寄付はお金だけでなく、家財道具、家電、衣類、書籍などの寄付も受け取っており、連絡があれば回収トラックが出向く(https://ikoinosono.org.br/wordpress/quer-ajudar/doacoes-em-materiais/)。
駐在員家族が本帰国する際に出る家具や家電も引き取るという。引き取った品は憩の園で地元民に転売され、その収益が運営費に回される。
引き取りを希望する人は連絡先(パウロ=doacoes@ikoinosono.org.br 11・2480・1122/WhatsApp11・98516・4829)まで。
ノッタ・フィスカル・パウリスタはサンパウロ州納税証明書。サンパウロ州財務局サイトにノッタの寄付先を登録することで、買い物をしてノッタを切るたびに自動的に寄付されるようになる(https://ikoinosono.org.br/wordpress/nf-paulista/cupom-com-cpf/)。
1942年6月、戦中に日本人を救済活動するために創設され、昨年80周年を迎えた救済会だけに、できる協力はしたいところだ。(深)