ブラジル日本商工会議所(小寺勇輝会頭)は17日、サンパウロ市のブルボン・イビラプエラ・ホテルで定例懇親昼食会を開催した。特別ゲストにジウマ政権時代に財務大臣及び企画大臣を歴任したネルソン・バルボーザ氏を迎え、ルーラ新政権における税制改革やGDP成長予測、資金調達対策、日伯関係の今後などについての講演を行った。同氏は現在、BNDES(社会経済開発銀行)ディレクターを務めている。昨年7月のコロナ禍休止再開以降、最多となる140人が参加した。
小寺会頭は冒頭、同日に開催した理事会と第73回定期総会で今年度の事業計画書と収支予算計画書が承認されたことを報告。近年は会員企業や駐在社員が減少し、商議所の活動を担う人員も減っているとの現状を述べ「会員共助のもと、会員の声を取りまとめ、ブラジルにおけるビジネス環境の改善に資する活動を行って、会員の持続可能な発展に寄与することを目指す」と活動方針についての説明を行った。
講演者のバルボーザ氏は、ニューヨークのNew School for Social Researchで博士課程を修了。ジュトゥリオ・ヴァルガズ財団ブラジル経済研究所で教鞭をとるなどアカデミック分野で活躍し、各種メディアにも多数出演している。
講演では、2023年のブラジルGDP(国内総生産)成長率予想範囲が、0・7~1・5%であること、インフレ率は低下傾向にあること、為替は安定するが政府の赤字は増加することが予想されていると説明。
新政権は世界有数の複雑さを持つブラジルの税制を改革する意向を持っており、税制における不透明さやあいまいさを取り除き、日本やヨーロッパの様に付加価値関連諸税を一本化するために国会で議論を進めるとした。アマゾンフリーゾーンの税制改革については少しずつ進められていく見通しだという。
BNDESは投資主導の経済成長を後押しする方針で、生産インフラや社会インフラ、産業多様化、イノベーション、エネルギー転換、環境保全修復の各分野で外資誘致を積極的に行っている。
講演前に桑名良輔在サンパウロ総領事がブラジル入国の短期査証免除が今年10月から取りやめになることについて報告を行ったことを受けて、BNDESでは日本には査証の優遇が必要であるとの提言を行っていることを明かした。バルボーザ氏の所属部門には3人の日系人同僚がおり、日本との繋がりは深いと語った。
公共インフラ部門の経済成長には民間企業の参入を必要とするが、一から設備投資を行う必要があるグリーンフィールド投資は不確実性が高く、参入障壁が高いため、官民一体で進めるのが理想であるとした。
2023年から2026年にかけてのインフラ投資額は9711億レアルに達し、投資先は主に電力(太陽光発電と風力発電)と物流(鉄道)分野となっている。低炭素社会実現に向け、電気自動車や電気バス、小型トラックなどのモビリティ事業に関する支援枠は、同分野で先進技術を持つ日系企業に積極的に提供される見込みとした。
バルボーザ氏は「日本とブラジルは長い間友好関係を築いてきた。グローバリゼーションが進む昨今、世界各地で生産活動が行えるように今後も関係を強化していきたい」と語り、講演を締めくくった。