―エシカルジュエリーの醍醐味は?
美しいジュエリーの多くが過酷な鉱山労働の上に作られています。私は鉱山に足を運び、研磨作業の現場を自分の目で確かめています。身につけていただくジュエリーが人や環境に配慮されたものであること、それが最優先事項であり、醍醐味であると思います。
―ジュエリーの仕事の中で印象深いエピソードは?
あるお客様がダイヤモンドの婚約指輪を探していました。しかし、ダイヤモンドの原石は紛争地で強奪されたものなど原産地が分からないものがあり、購入を躊躇しているとのことでした。HASUNAではエシカルジュエリーとして原産地もはっきりと分かるようになっているので、お客様に喜んでもらうことが出来ました。
ほかにも、パキスタンの山岳部では日本では想像できないほど女性の仕事がなく、未亡人がたくさんの子供を抱えて生きなければならないような現状があります。その様な場所で、現地で採れる鉱石を磨く仕事を女性たちに教えるNGOがありました。HASUNAでは彼女たちの磨いた石を日本で販売し、多くの人に大変喜ばれました。
―影響を受けた人物や尊敬する人物はいますか?
学生時代には国際社会で活躍される緒方貞子さんに憧れ、実際にお会いする機会もいただきました。
祖父は薬剤師で事業も行っていましたが、若い頃に海外留学したいという夢を持っていました。日本人女性は家庭でも社会でも窮屈だから海外に出たら良いと後押しもしてくれました。
母は鹿児島から上京してファッションデザイナーとして働いていましたが、結婚を機にやめてしまいました。母自身は自分に才能がなかったからといいますが、私は道半ばでやめてしまったのはとてももったいないことだと反発を覚えたことがあります。
世界的ファッションブランドを創ったココ・シャネルは、服作りを通じて、社会へメッセージを送ることができることを示してくれました。またそのファッションデザインは、女性が社会で仕事をするためのものであり、尊敬しています。
―女性の起業に必要なことは?
日本の女性起業家割合は約10~20%で、他国同様に高くありません。起業家や起業をしようとする人がお互いに励まし合う会を行っていますが、非常に効果があります。皆で背中を押し合い盛り上げる取り組みの必要性を感じます。
―女性が起業するメリットは?
時間をフレキシブルに使える点がメリットとして挙げられます。子供が生まれると時間を融通できないと困る場面も多くありますので。その他にも自分の夢を追いかけて自己実現を果たすことや、様々な人との出会い、定年なく働ける、好きなことを続けられるのでストレスフリーな生活を送れることもメリットとして感じます。
―海外の日系人女性はどのような分野で起業のチャンスがあると思いますか?
日本人が海外に出ようとしてもマーケティングが難しいという問題があります。日本語とその他の言語ができる強みを生かしで、海外マーケティング方面にチャンスがあると思います。
―ビジネス成功の秘訣は?
諦めないこと、粘り強さです。そのためには、好きな事やワクワクすること、心動かされることがビジネスに結びついていることが大切です。
―SDGsビジネスの展望は?
この15年で気づいたことは、世界は私たちの手で変えられるということです。起業した当初は、エシカルという言葉は一般的でなく、興味も持たれませんでしたが、2000年以降に生まれたミレニアム世代は社会貢献するブランドに興味を持ち、商品の購入基準としています。今後の消費を支えるミレニアム世代を考えると、企業は社会問題解決の取り組みをビジネスに導入することは必須となっていくでしょう。(大浦智子取材、終)